第1話【無価値の無駄な荷物はここに置いていく】

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 あまりの事実に打ちのめされ、私は何もする気力もなくなり、床の上に無造作に身体を投げ捨て、ただただ時間が過ぎていくのを待った。  どのくらいそうしていただろうか。  意識していなかったので、日が変わったのかすら記憶にない。  ただ、ひたすらに頭の中を駆け巡る思考。  それはお腹が空いた、ということだった。 「このまま干からびて死ぬのも()だし、生きれるだけ生きてみるか……母さんの遺言もあるしね」  不幸にも私を産んだことが原因で亡くなった母親ルビスは、死ぬ間際に自分の分まで私に健やかに生きてほしいと言っていたらしい。  とにかく、無為に干からびて死んでしまっては、命を賭して産んでくれた母親に申し訳が立たないというもの。  思い立ったらすぐに行動をするのが吉だ。  私はその場に勢いよく立ち上がり、何か口にできるものがないか、村中を探してみることにした。 「案の定というか……なんもないわね。しょうがない。狩りに行くしかないか」  私は自室に戻って、一本の長めの木でできた棒を持ち出すと、村を出て森の動物の狩りを始めた。  エルフの狩りは魔法によるものだが、魔力が無く魔法が一切使えない私は、獲物を脚で追いかけ、直接この棒で殴るしかない。  初めは一匹も狩れない日々が続いたが、毎日がむしゃらにやっていれば、そのうち身体も慣れる。  自分の腹を満たすための獲物を狩るくらいは問題なくできるようになっていた。
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