第1話【無価値の無駄な荷物はここに置いていく】

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「よーし。ひとまずむしゃくしゃした気分をスッキリさせるために、今日は疲れるまで狩りを続けるわよ!」  こうして、無価値だと捨てられた私は、瘴気が迫り来る森の中、一人生き抜くことを決めた。  初めは森に住む動物たちは、よく見知ったものばかりで、大型の獣さえ気を付けれていれば問題はなかった。  ところが、私が狩り過ぎたわけでもないのに、いつからか小型の動物たちの姿は消えた。  代わりに見たことがない生き物たちが次第に増え始める。  異形ともいえるその生き物たちは、大小様々で、小型でも元々森に生息していた大型獣を用意に殺すほどの()()さを持っていた。  異変に気付いた当初は、危うく殺されかける場面にも遭遇したほどだ。  簡単に狩れる獲物が減って、森の危険が増えてきたこともあり、私はある時から訓練を日課にしていた。  魔法が一切使えないため、できることといえば、肉体を鍛えることだけだけど。  その甲斐あって徐々に危険を感じる森の生き物が減っていき、今では私を見るとほとんどの生き物が逃げ出す。  それを追いかけ、手にした棒で叩いて狩る。  遠い昔にしていた狩りのスタイルに、ようやく戻れたってわけ。  そうなってからも私は森を出ることなく、誰と会うこともなく、一人で暮らしていた。  自分は森の外のことを知らないし、森での暮らし以外に意識が向くことがなかったのが理由。  ところが、私以外のエルフが森を捨て、ちょうど()()が経った日のこと。  私の人生に大きな変化が訪れた。 「きゃあああああ!! 助けてー!!」  いつものように森で狩りをしている最中に、一人になって以来初めての人の声が聞こえたのだ。
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