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第2話【他者との遭遇】
私が声の聞こえた方へ向かったのは、単なる好奇心だった。
独り言を以外に意味のある言葉なんて聞いたがいつだったかすら忘れてしまった。
それがたまたまそう聞こえた別の音じゃないなんて保証はどこにもない。
だけど、結果的に私はその場に到着し、そして出会ってしまったのだ。
今後の私の人生を大きく変えることになる人物に。
目の前に居たのは、普段ならこの辺には姿を現さない『二本ヅノ』と、見たこともない衣装を纏った女性だった。
昔、男女の違いは胸の膨らみ方に現れると聞いたことがあるから、あんなに立派に膨らんでいれば、女性で間違いないだろう。
「しかし……あれが女性の胸だとすると……ずっと私は女だと思っていたのだけれど、実は男だったのかしら……」
自分の獣の皮で覆われた胸部に目線を落とし、衝撃の事実を知ってしまったのではないかと戦慄している時に、女性が声を上げた。
「そ、そこの野性味あふれるお嬢さん! 逃げてください‼︎ 三メートルを超えるバイコーンなんて、敵いっこないですから‼︎」
お嬢さん……
お嬢さんというのは確か、女性に使う言葉だったはずだ。
ということは、私はやはり女だということになる。
安堵と共に、何故あの女性が私を女だとすぐに分かったのか教えてもらうため、私はひとまず邪魔な『二本ヅノ』を排除することに決めた。
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