第2話【他者との遭遇】

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「大丈夫! こいつはちょっと()()()だけど、問題ないから!」 「ニガテじゃ済まされる相手じゃないですよ⁉︎ 分かっているんですか? バイコーンは周囲に毒を撒き散らす危険な魔物で、特に額に生えている二本の角は、あの巨人サイクロプスさえ一撃で仕留めるほどの猛毒なんですから‼︎」  『二本ヅノ』というのは、私が勝手に呼んでいる名前で、あの女性はバイコーンと呼んでいるようだ。  確かに額に生えた二本の滑らかな黒角で、この辺りの多くの生き物を一撃で殺してきたのを何度も目撃している。 「まぁ、角なんて避ければ」 「そんな簡単に行くなら誰も苦労しません! バイコーンはその巨体によらず素早く機敏な動きをしますし、角以外にも上体を起こしてからののしかかりや、後脚の強力な蹴りだって一撃必殺の威力を秘めているんですから‼︎」  なんだか随分と『二本ヅノ』について詳しいみたいだ。  なんて思っていたら、私との会話のせいか、逃げていた彼女が足元でつまずき、前に転がるように倒れ込んだ。  周囲の状況に念のためざっと目を向ける。  所々の木々は燃えたり折れたりしていて、女性の服は明らかに逃げ惑ったことが分かるほど破れ汚れていた。  どうやら逃げながらも反撃はしていたようだ。  そんなことを思っている間に、女性は観念したのかその場に座り込み、呪詛のような言葉を漏らし始めた。
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