第2話【他者との遭遇】

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 バイコーンは女性に向かって上体を高く持ち上げる。  このまま下に前脚を振り下ろすつもりだろう。 「あーあー。私の人生ここで終わるんですね。なーんもいいとこなかったけど、こんなことになるなら、王都にできたミレッツェのお店で吐くまで食べておけばよかったです……港町の新鮮な海鮮が食べられるアドラーだってまた行きたかったし、そういえばミザリーさんの新作だってまだ味見できてないし……」 「なんかブツブツ言ってるけど、それは詠唱か何か?」 「え……? って、ぎゃあー!? なんで貴女が隣にいるんですか!? 一緒に押しつぶされちゃいますよ!!」 「押しつぶされるって何に?」 「何って、バイコーンに決まってっ! ……!? あれ? バイコーンは?」  うずくまっていた女性は、目線を上や下に忙しなく動かし、やがてかなり離れたところで息絶えたバイコーンを見つけたようだ。  目の前にかけた二つの輪っかを付けたり外したりしながら、バイコーンの死骸と私を何度も見返していた。 「ひとまず。『二本ヅノ』……じゃなかった。バイコーンって言うんだっけ? あいつは殺したから、もう安全よ。私はルシア。あなたは?」 「ば、バイコーンを……しかも成獣を一瞬で倒したんですか!? どうやって……あ! わたしはエマと言います。危ないところを助けてくださって大変ありがとうございました!!」
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