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「…中学生?」
まず私はそれを言って、しまったと思った。
何故ならその男子が、私をはたと睨みつけていたから。
「背が低くて悪かったな!これでも高校2年生なんですぅ」
高2といったら私より年上じゃないか。人を見た目で判断してはいけない、そう思う材料がまたひとつ揃った。
「…」
「てか大丈夫なのか?こんなに土砂降りなのに傘もささないで」
「…あなたは」
「ん?」
「あなたは、…何故傘をささないの?」
もしかして私と同じように、家を追い出されたんじゃないか。そんな甘い考えが頭をよぎる。私の予想に反して彼はあっさりと答えた。
「ん?だって、これ水を弾くからさ」
彼は自分の上着をひょいと摘んでいた。
やっぱり、違ったか。ちょっとがっかりしていると、また彼は口を開いた。
「生憎傘は持ってないんだけどさ、ん」
「?」
彼は私に手を差し伸べてきた。どういう、こと?
「オレの手ぇつかめよ」
この時何故か彼のことが、すごく頼もしく見えたんだ。
「とりあえず、風呂入っていいから」
「別にそんなことしてもらわなくても…」
私には何も返せるものがない。スマホもお財布も全て家。あるのは私の身体と、制服と、…そしてポケットに入っている櫛とリップくらい。
ふたつ合わせても千円しないくらいの安値なものだし、私の身体だって特に役立てるわけでもない。
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