ここから

5/30
前へ
/137ページ
次へ
「ないけど」 「え」 「そこにソファーあるから、そこで俺が寝る」 「えっ、でも悪いよ…」 「いーから」 そう言われ、申し訳なく思いながらも私はベッドに潜り込む。 「寝るときって電気つける?」 彼がリモコンを持ったままそう聞いてきた。 「つけない。真っ暗」 「俺も」 そのあと、電気はふっと消えた。 でも外の電灯の光が差し込んでいるから、そこまで真っ暗ではない。彼の顔は見えないけど、どこにいるのかはわかるくらいだ。 「じゃ、おやすみ」 「…おやすみ」 そうは言ったものの、全く眠くならない。今日は殴られて身体的にも精神的にも疲れたはずなのに。突然自分の格好が寝るのに不便なことに気がついて、寝返りをうつ。 それでもおさまらない。お母さんは私のことを探してたりするのかな、いやそんなわけないか。あのときに、 「出て行け」 と私を追い出したのはお母さん自身だ。お父さんはきっとまだ海外に出張しているはずだからいない。 といっても、帰っていたとしてもきっと私には口を出さない。 もう私はダメな子だと分かりきっているからか。そう思うと悲しくなった。 涙は一滴も出てこないけれど、親からそんなふうに思われていると改めて自覚するのが怖かった。もう私はいらない子なんじゃないか、嫌なことがぐるぐると頭の中を回る。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加