ここから

6/30
前へ
/137ページ
次へ
「…」 仕方ないから、私はまず水を飲むことにした。水道水なら勝手に飲んでもいいだろうし。 …本当はダメなのかもしれないけれど、なにか刺激が欲しかった。 水道水はあまりおいしくはなかった。 「おはよう」 「おはよ。もうご飯できてるよ」 「…ありがとう」 そういえば私、ありがとうとしか言っていない気がする。 昨日良く眠れなかったことを理由にして、朝に起きられなかった。しかも泊まらせてもらっている身なのに、食事まで作らせるなんて…最低だ。 「ま、食べてみ?美味いから」 得意げな彼の顔が可愛い。 そんな彼を横目で見ながら、私は用意された朝食にありつく。 「おいしい…」 どうやら彼の言うことは本当らしかった。昨日しっかりと食事を取らなかったせいか、お腹までぐうっと音を立てて鳴り始める。 「いいぞ?かっ込め」 彼はくすくすと笑った。仰せのままにと言わんばかりに、私はばくばくと目の前にあるものを平らげる。その食事はすごく、温かかった。 「そういやさ、今日平日じゃん?学校大丈夫そ?」 ある程度食べ終わったあと、彼が尋ねてきた。 「…行かなきゃ」 でも、定期も財布もなにもないし、それにここから学校へどうやって行くのかわからない。 「学校どこ?」 「桜山高校」 「ふーん。あそこならここから行きやすいよ?家出たらまっすぐ行けば駅があって、そこから3駅くらいしたら着く」 「そうなんだ…でも私、お金持ってないし…」 「いーよいーよ。出すよ」 「申し訳ないよ…一回家に戻ってから行く」 「…大丈夫なのか?」
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加