いつか薔薇になれる日まで【「超・妄想コンテスト裏会場」奨励賞受賞作品】

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 するとそこへ、糞尿たちの陳情を聞いた肥溜めの持ち主がやって来た。臭そうに鼻を(つま)んで顔をしかめながら。  そして、肥溜めの(ほとり)に佇む美しい白百合をみつけると、そっと手に取りその香りを嗅いだ。百合は(かぐわ)しく香る。  すると、肥溜めの持ち主はみるみる表情をやわらげ、百合を自分の鼻に押し当てうっとりとした表情を浮かべたまま、夢見るような足取りで肥溜めから立ち去った。  肥溜めの中の糞尿たちからは、あの美しい百合の姿はもう見えない。あの芳しい香りも、もはや漂っては来ない。 「わーい、これで元の居心地の良い花園に戻ったぞ!」  糞尿たちは大喜び。目の上のたんこぶを追い払うことに成功したからだ。
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