いつか薔薇になれる日まで【「超・妄想コンテスト裏会場」奨励賞受賞作品】

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「あなたは、雪よりも白く美しい。すべての被造物の中で最も美しい物は、あなたを差し置いて他に何もありません」 「あなたの赤い花びらは(つや)やかで、誰よりも鮮やかです。ボルドー産の赤ワインさえ、あなたの赤さの前には色褪せて見えることでしょう」 「そう言うあなたこそ、すべての苦しみを忘れさせてくれる至高の香り。天上の花園に咲く花すらも、あなたの前には恥じ入ることでしょう」 「あなたの造形美には、とても(かな)いません。神の御業(みわざ)に感謝せずにはいられません。あなたは、神の御手(みて)による最高傑作です」 「あなたの香りを嗅ぐと夢見心地になって、うっとりしてしまいます。地上に生きとし生ける物たちのために神が調合し(たも)うた、無害どころか有益な天然麻薬なのでしょう……」  糞尿たちはふたたび、互いにお世辞を言い始める。自分も褒めてもらって、うっとりと良い気分に浸るためだ。
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