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糞尿たちが肥溜めの中で、何やら夢中で語り合っている――――。
そこへ百合がうっかり間違えて、肥溜めの畔までやって来た。いつまでもいつまでも嗅ぎ続けていたくなる得も言われぬ香りを放ちながら。
柑橘類を思わせる爽やかさと完熟した桃のような芳醇な甘さ、唾液腺を刺激するバニラ系の美味しそうな匂いまで併せ持っている。
――世界各地の最も香りの良い花を集めて交配し、一本の花を作り上げたなら、こんな香りを放つ花になった――
そう説明されれば、なんの不思議もなく納得してしまう、比類なき香りだった。全身を鼻に変え、そのまま生涯を終えても悔いがないほどの……。
肥溜めの中にいる糞尿たちは、その匂いに反応して辺りを見回し、肥溜めの畔に芳しく香る優美な曲線からなる清楚な白百合が佇んでいるのをみつけたのだ。
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