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プロローグ
東京の夜の街を一望できる20階建てのビルの草木に囲まれたビアガーデン。そこには若い男女のカップルや、6人以上の複数人で来ている客などでイタリアン料理やフランス料理を食しながら賑わっていた。
その中で夜景を眺めながら月下に晒されている20代後半の若い二人の男女がいた。
男性はネイビーのセットアップのスーツを身に纏い、ピンク色のネクタイをしたセンターパートの中肉中背の男だ。
一方、女性はハイトーンベージュのショートカットに、白のワンピースと赤のヒールという出で立ち。雪のような白い肌に童顔で可愛らしい華奢な女性だった。
「綺麗だね」
女性がそう呟く反面、男性は女性の横顔に見惚れていた。
「そうだな」
秋風が二人の間を通りすぎると、女性は耳元の髪をかきあげた。
男性の心臓は高鳴りを打ち、少し顔が紅潮したまま視線を光り輝く街に戻して、拳をぎゅっと握る。
「望ちゃんは酔った?」
「少しだけね。でも優司君がこのスポットに連れてきてくれたら、酔いは大分冷めているよ」
「ならよかった」
優司はふうと小さく息を吐き、望に体を向けた。
「今日はさ――聞いて欲しいことがあるんだ」
「なに?」
望は返事をすると優司の方に体を向ける。
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