4. 哀しみの再会

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4. 哀しみの再会

〜警視庁対策本部〜 【警視庁襲撃事件対策本部】 破損したビルの修復工事が行われる中、富士本は襲撃事件の合同捜査本部を立ち上げた。 「昨日、本ビルに於いて大規模な襲撃事件が発生。尚、本事件は2件の集団失踪との関連性もあり、これについても、並行して捜査するものである。では、まずは報告を」 不可思議な集団失踪との関連性に、当然ながら疑問の呟きが聞こえる。 「まず、昨日の襲撃事件についてですが、襲撃した者は全て殺人の請負い人、いわゆるプロの殺し屋達でした」 昴の説明に合わせ、24人の写真と詳細がメインスクリーンに並ぶ。 「成田空港の監視カメラで、全員の入国が確認されました。犯人の内16名は死亡、8人は確保。尚、この1週間で30人が入国しており、残り6人は捜索中です」 「今朝、指名手配をかけたけど、ヤツらの標的は不明。昨日の襲撃には計画性がないことから、首謀者の警察への威嚇…まぁ、挨拶のつもりかもね。各自注意するように」 「或いは、警察の目をそちらへ向けさせるための偽装襲撃とも考えられます。これを見てください」 昴が東京駅の監視カメラ映像を流す。 「これは例の新幹線から下車する乗客達です」 4台のカメラの一つには、誰もいないあの車両も映っていた。 不意に昴が映像を止めた。 「ラブさん、お願いします」 いつものスタイルのラブが、ステージ左端の昴へと向かって歩いて来る。 ショートパンツからスラリと伸びる美脚に、男達の視線が下がる。 「ありがとう。これは昴刑事にお願いして、調べてもらった内容です」 (アイ、お願い) 画像がズームアップし、鮮明化される。 「この2人が、失踪に関与しているものと考えられます」 「確かに、異様な2人だが、これだけで断定はできないだろう」 当然の指摘である。 「そして、これが国際銀行が強盗にあった時の映像です」 画像が止まり、ズームアップされる。 「おぉ…」低い驚きの声が起こる。 「画面の時刻からすると、強盗発生の2分前」 新幹線から降りたフードマントと同一人物が、入って行き、直ぐに出て来た。 それとすれ違うように複数のサラリーマン風の男達が入り、作業着の男がバリケード🚧と看板🪧を置いて中へ入る。 映像はそこで移動し、銀行が視野から消える。 「この映像は、バスのドライブレコーダーのものです。都内は沢山の民用バスと観光バスが巡回しており、TERRAは全てのバスに高感度のドライブレコーダーを提供しています。高い位置に設置できるので、広範囲を写すことが可能であり、特にこの周辺は常にバスが往来しているポイントでしたので、事件発生時刻のダイヤを調べ、発見に至りました」 「やっぱりラブさんってのは凄ぇな」 豊川が、隣の紗夜に呟く。 「ほんとよね。常に先を見て、世の中に尽くしています」 「ちょっといいか、ラブさん」 その豊川が手を挙げた。 「東京駅と今の映像なんだが、あのフードマントのヤツ、おかしくねぇか?…まぁ、今回の2件共、俺が言う言葉じゃねぇが、普通じゃありえねぇことだらけだ。人だけじゃねぇ、あの金庫も綺麗に丸く扉が消えていた。ソイツの仕業なら分かる気がするぜ。超常現象ってのがな」 「豊川、お前がそんな…」 「分かってるよ、菱川部長。だがな、その言葉しか結論がだせねぇんだよ。ラブさんもう一度再生して貰えるか?」 ラブがアイに指示して再生する。 東京駅の映像も分割スクリーンで映した。 「これだ。東京駅でも銀行でも、普通は階段を歩けば肩が揺れるが、アイツはスーって行きやがる。それだけじゃねぇ、銀行の自動ドアはまだ開いてる途中なのに、肩がぶつかる事なくすり抜けてんだ」 「確かに…」「本当だ…」 「豊川さん、さすがです。これで、少しは皆さんも、自然現象ではないと言うことを前提に捜査ができるかと思います。それだけ、危険な相手だということです。あとこれは、銀座で撮影されたものです」 2人の顔までハッキリ写っていた。 「前にいる男は、ロシアのミゲル元副官房長官で、記録上は死亡となっています。義足であることから、負傷はしたものの生きていた様です。東京駅でフードマントの奴といた男と一致しました。背の高い方はロシアの殺し屋で、通称スコーピオン。数々の要人暗殺に関わっていると言われています」 「ロシアに殺し屋、超常現象かぁ…いったいなにが起ころうとしているのやら。とにかく、私達は、今できることをやりましょ。指名手配犯の捜索と、フードマントに要注意ね。マントのやつ見つけたら、警察よりラブさんへ連絡をしてください。絶対に近づいたり刺激しない様に。では解散❗️」 (解散は…俺の仕事だぞ、咲…) 富士本が心の中でボヤいた。
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