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〜ロシア連邦サンクトペテルブルク〜
日本との時差はー6時間。
遅い昼食を済ませた2人。
行く先々で、ヴェロニカを知らない者はなく、その度に時間を費やした。
「すごい人気だな」
「さぁね〜英雄の娘って形だけど、あの笑顔が全て真実とは思えませんわ」
「こ…ここなのか…?」
街を少し離れた場所に、大きな洒落た門があり、格子の奥に宮殿さながらの建物が見える。
門はオープンで、かなりの人が敷地内にいた。
「ほとんどが観光客ですわ。こんなとこを閉めておくのはもったいないですから。行きましょ、あの正面の建物は観光用だから、その裏へ廻ってくださる?」
「仰せの通りに」
広大な庭に、沢山の噴水。
まさかこの家の娘がここにいるとは、誰も想像すらしないであろう。
ただ、国産の赤い高級スポーツカーは、人々の関心を惹きつけていた。
宮殿の裏に回ると、更に広大で美しい景色が広がり、やはり宮殿並みの建物があった。
門番が驚いて出て来る。
「これは、ヴェロニカ様、お帰りなさいませ」
「ヴォルト、元気そうで何よりです。今は誰か?」
「チェコノヴァ様が、半年程前に戻られましたが、直ぐにまた出て行かれました」
「そう…リーシャはいますか?」
「はい、お喜びになると思います」
ゆっくりと進め、邸宅の庭に車を停める。
すると高齢の女性が出てきた。
「お帰りなさいませ。まぁ御立派になられて、若い頃のお母様に似て参りましたね」
「リーシャ、留守をありがとうね。20年振りかしら?」
「それぐらいでございますね。あ、旦那様、この家に支えておりますリーシャです。さあさあ中へどうぞどうぞ」
「旦那様?」
「ま、まぁいいからいいから💦入りましょ」
彼女のキャスティングでは、そう言う設定になっていたのである。
ひとしきり、リーシャと和やかな会話に花を咲かせていると、夕飯の時間が直ぐに訪れた。
「連絡を頂いて、シェフ達も喜んで2日前からメニューを練っておいででした」
「わざわざ呼び戻したの⁉️」
「もちろんでございます。少し手伝って参りますね。旦那様…」
「申し遅れました。ティークとお呼び下さい」
とりあえず、この流れでは合わせるしかない💧
ウィンクするヴェロニカ。
(つ…疲れる…💧)
「おまえ…でいいのか?」
「あ、ヴェニーで❣️」
「ヴェ…ニー、普通に話すんだな家では」
「当たり前でしょ。懐かしいわ〜」
こんなに自由で自然な彼女を初めて見た。
無表情なティークが、無意識に微笑んでいた。
それに気付くヴェロニカ。
(これが、任務じゃなければいいのに…)
豪勢な夕食が済み、シェフとリーシャが下がって行く。
「寝室は、ご用意しておきましたので、ではおやすみなさいませ」
「おやすみ〜」
「さて、入浴の前に済ませましょ」
あの真剣なヴェロニカが戻った。
「まずは、父と母の部屋ね」
2人で捜索したが、特に何もでるはずはない。
「やはりそうよね」
「ヴェニー、ラブが私を送った理由は二つ」
順応は意外と早いティーク。
(ヴェニーだなんて…💓)
ある意味、順応が早い幸せ者。
「ヴェニー、その模擬暖炉の内側だ」
「ヴェロニカが手で探るとスイッチがあった」
壁が少し奥へ動き、開いた。
ティークがスパイアイで透視した部屋である。
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