4. 哀しみの再会

2/6
前へ
/37ページ
次へ
〜ロシア連邦サンクトペテルブルク〜 日本との時差はー6時間。 遅い昼食を済ませた2人。 行く先々で、ヴェロニカを知らない者はなく、その度に時間を費やした。 「すごい人気だな」 「さぁね〜英雄の娘って形だけど、あの笑顔が全て真実とは思えませんわ」 「こ…ここなのか…?」 街を少し離れた場所に、大きな洒落た門があり、格子の奥に宮殿さながらの建物が見える。 門はオープンで、かなりの人が敷地内にいた。 「ほとんどが観光客ですわ。こんなとこを閉めておくのはもったいないですから。行きましょ、あの正面の建物は観光用だから、その裏へ廻ってくださる?」 「仰せの通りに」 広大な庭に、沢山の噴水。 まさかこの家の娘がここにいるとは、誰も想像すらしないであろう。 ただ、国産の赤い高級スポーツカーは、人々の関心を惹きつけていた。 宮殿の裏に回ると、更に広大で美しい景色が広がり、やはり宮殿並みの建物があった。 門番が驚いて出て来る。 「これは、ヴェロニカ様、お帰りなさいませ」 「ヴォルト、元気そうで何よりです。今は誰か?」 「チェコノヴァ様が、半年程前に戻られましたが、直ぐにまた出て行かれました」 「そう…リーシャはいますか?」 「はい、お喜びになると思います」 ゆっくりと進め、邸宅の庭に車を停める。 すると高齢の女性が出てきた。 「お帰りなさいませ。まぁ御立派になられて、若い頃のお母様に似て参りましたね」 「リーシャ、留守をありがとうね。20年振りかしら?」 「それぐらいでございますね。あ、旦那様、この家に支えておりますリーシャです。さあさあ中へどうぞどうぞ」 「旦那様?」 「ま、まぁいいからいいから💦入りましょ」 彼女のキャスティングでは、そう言う設定になっていたのである。 ひとしきり、リーシャと和やかな会話に花を咲かせていると、夕飯の時間が直ぐに訪れた。 「連絡を頂いて、シェフ達も喜んで2日前からメニューを練っておいででした」 「わざわざ呼び戻したの⁉️」 「もちろんでございます。少し手伝って参りますね。旦那様…」 「申し遅れました。ティークとお呼び下さい」 とりあえず、この流れでは合わせるしかない💧 ウィンクするヴェロニカ。 (つ…疲れる…💧) 「おまえ…でいいのか?」 「あ、ヴェニーで❣️」 「ヴェ…ニー、普通に話すんだな家では」 「当たり前でしょ。懐かしいわ〜」 こんなに自由で自然な彼女を初めて見た。 無表情なティークが、無意識に微笑んでいた。 それに気付くヴェロニカ。 (これが、任務じゃなければいいのに…) 豪勢な夕食が済み、シェフとリーシャが下がって行く。 「寝室は、ご用意しておきましたので、ではおやすみなさいませ」 「おやすみ〜」 「さて、入浴の前に済ませましょ」 あの真剣なヴェロニカが戻った。 「まずは、父と母の部屋ね」 2人で捜索したが、特に何もでるはずはない。 「やはりそうよね」 「ヴェニー、ラブが私を送った理由は二つ」 順応は意外と早いティーク。 (ヴェニーだなんて…💓) ある意味、順応が早い幸せ者。 「ヴェニー、その模擬暖炉の内側だ」 「ヴェロニカが手で探るとスイッチがあった」 壁が少し奥へ動き、開いた。 ティークがスパイアイで透視した部屋である。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加