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〜TERRA〜
地下本部に戻ったラブ。
その目は真剣そのものであった。
「昴さん、さっきの続きを教えて」
「はい、例の2人ですが、見つけました」
モニターに監視カメラの映像が映る。
「これは名古屋ね」
「はい、名古屋駅から例の新幹線に乗っていました。それから、これが中部国際空港の到着ロビーです」
ミゲルとフードマントのヤツがいた。
「どうやって入国を?」
「それなんですが、少し事件があった様で、税関で数名が行方不明になっていることが分かりました。恐らくアイツの仕業だと思います」
「フライト便は?」
「この時間帯に到着した国際線は、上海からの東方航空とアメリカからのデルタ航空の2つ」
「日本と中南米に直行便はないから、どちらか経由になるわね」
「で、見つけました。ミシガン州デトロイトメトロポリタン国際空港の出国ゲートです」
ミゲルとアイツが映っていた。
「出国審査は、無い様なもんだからな、スルーパスしてやがる」
アイがモニターに、南米大陸への国際線の航路を映す。
「今の警戒態勢下で、ペルーから陸路で国境を越えるのは不可能とすると、デトロイトとペルーが繋がるのは、この2つね」
「はい、ジョージア州のアトランタ国際空港か、フロリダ州マイアミ国際空港」
「問題はそこなんだが…経路的にはマイアミ経由が普通だよな。そう思ってアイにマイアミ国際空港の監視カメラ映像を探って貰ったんだが…」
「データにアクセスできませんでした。監視カメラの故障か、または…」
「故意に消したか」…(まさか!)
極秘専用回線用の携帯で発信するラブ。
「ラブさん、こんな時間になんだね」
「夜中にすみません、マイケル本部長。マイアミ国際空港の件でお話が…」
「やはり君のところにも情報がいったか…」
NASA マイケル・ターラント本部長である。
(ビンゴね)
「情報が錯綜してて、貴方の情報が一番かと」
「ペルー同様、協力して貰えると助かる。バーン元大統領と君は、友人の様だったしな」
(バーンが巻き込まれてるの?)
驚きの事態であった。
「ペルーのホルヘ・チャベス空港発、マイアミ行きのデルタ航空465便の乗客が、消えてしまった。その中にバーン元大統領とご家族も乗っていたんだ」
(そんな⁉️)
ウォレスト・バーン元大統領とは親交が深く、娘を連れてTERRAのフェスティバルに来たこともあった。
(ラブさん、今は我慢してください)
心配そうに見つめる昴。
「た、確か…生存者がいたはずでは?」
「あ…あぁ…それが」
「大事なことです。真実を話してください」
「そうだな。1人だけいた様で、マイアミの救急隊が病院へ移送中に事故にあってな。警察が着いた時には…」
「誰も…居なかった」
「その通りだ。運転席は大破していたが、血痕すら残っていなかったんだよ。いったい何が起きているのか…」
「分かりました。恐らく今のアメリカは心配いりません。安心してください。ではまた」
「君にそう言って貰えると心強いよ。では」
通話を切った。
「クッソォーッ❗️」「バンッ❗️」
思い切り殴った合金壁に、拳が半分めり込む。
「アイ!465便到着からマイアミまでのハイウェイ映像を!」
「監視衛星画像を今捜索中です」
「ラブさん…」心配そうな昴。
「混乱を防ぐために、情報は伏せる…か、仕方ねぇな。新幹線どころの騒ぎじゃ無いはずだ」
「見つかりました。雲があり鮮明ではありませんが、映します」
空港を出る救急車。
ハイウェイに乗ってしばらくし、緩いカーブに差し掛かる…が、曲がらない。
そのままガードに激突し、反動で横転して止まった。
「事故前にヤツにやられたな……んん?」
直後、後続車が停まり、運転手が降りて救急車のバックドアをあけた。
雲の切れ間からしか見えず、はっきりしない。
車は直ぐ先の中央分離帯の切れ間で、強引にUターンし、空港へと戻って行く。
その時、ラブに異変が起きていた。
「そ…そんなバカな…あり得ない」
目を見開いたまま、ラブか後ろへ下がる。
顔色が真っ青になり、汗が頬を伝う。
「ラブ❗️ど、どうしたんだ⁉️」
「ラブさん❗️」
ヨロめいたラブを昴が支える。
「ありえない…そんなことっ…」
「ラブ!しっかりしろ❗️」
「心拍異常、体温低下中」
「アイ!なんとかしろ!」
(ラブ様、ラブ様……ラブ、ラブ)
「回復室へ!」
あのラブが…気を失ったのである。
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