1. 終焉の始まり

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〜東京都千代田区〜 20:30 東京駅。 博多からの新幹線が入る。 減速する混み合った車内を、ホームから何気に見ている人達。 誰もが、その違和感に気付いた。 ポッカリとの客車が一つ。 しかし、そこは東京に染み付いた文化。 空調トラブルか何かの類いだろうと、それ以上、特に気に留める者は居ない。 下車する人波の中に、異国情緒あふれるフードマントの者と、先導する義足のロシア人がいたとしても、同じことであった。 結局、回送前に全車両を確認していた車掌が、その異常な空間を目の当たりにし、警察へ通報するに至った。 その一車両は、まるで今の今まで満席であったかの如く、荷物や飲み物が、全てそのまま残されていたのである。 〜警視庁凶悪犯罪対策本部〜 TERRAに隣接して立つ30階建てのビル。 この時間になると、半数は退社済みである。 「富士本さん、帰ります」 昼間の強盗事件の調書をまとめ終え、宮本紗夜が、席を立つ。 「じゃ、俺も帰るわ、部長もほどほどに〜」 紗夜の夫、宮本淳一が手を挙げた時。 刑事課の電話が鳴った。 嫌な予感が走る。 「はい、警視庁対策本部刑事課です」 躊躇(ためら)う事なく出る紗夜。 直ぐさま、スピーカーフォンに切り替える。 「こ、こちらJR東京駅派出所の森川です。乗客が…消えました…」 「はぁ?誰が消えたって?」 面倒臭そうに淳一が問いかける。 「それが…その…」 「大勢なのね?」 森川の心理を読んだ紗夜。 紗夜には、盲目であった頃に身についた特殊な能力があり、人の心理を感じ取り、心を読むことができた。 「新幹線一車両の全員が消えたんです!」 顔を見合わす三人。 「分かりました。現場はそのまま保管して、誰も入れない様に。後は、そのホームの監視カメラ映像を用意してください。直ぐ向かいます」 「マジかよ、全く」 「部長!」 「紗夜、淳、頼むぞ」 「よくある集団パフォーマンスじゃないっすか?人騒がせな奴らの」 「愚痴ってないで、行くわよ淳!」 エレベーターが開くと、鑑識部兼化学分析部長の豊川がいた。 「丁度良かった〜。豊川さん東京駅へ何人か集めてください。異常事態の可能性があります」 「今からか?」 「帰りが一番遅い連中だろ?」 「研究オタクの集団だからなうちは。分かった、何人か連れて俺も後から直ぐ行くぜ」 「助かります。新幹線の乗客が一車両分消えたとのことで…では現地で」 こうして、半信半疑なまま、捜査が始められたのであった。 これが、まさか地球滅亡に繋がる、終焉(しゅうえん)の始まりとは、知る(よし)もないまま…
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