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2. 深まる謎
TERRAの地下20m。
現代の文明より遥かに進んだフロアがあった。
ラブ達の本拠地であり、世界のみならず宇宙に至るまで、マザーシステムのAIとT2が監視していた。
専用エレベーターからラブが出て来る。
「アイ、ペルーのデータを見せて」
メインルーム中央にある3Dモニターに、映像と情報が映し出される。
「2つの町共、一晩の内に全ての生命体が消えた。目撃情報はなく、深夜に通信していた者の話しでは、突然不通になったそうだ。NASAとEARTHで調べてるが、今のところ何の痕跡も無し」
淡々と話す美形の紳士、ティーク。
彼の片目にはスパイアイと呼ぶ透視装置があり、剣術や射撃の腕、そして瞬発力は、ラブにヒケをとらないタフガイである。
「監視衛星🛰のメモリーでは、真っ暗で何も映っていねぇ。20万人と25万人だぜ、ペルー共和国ってのはどうなってんだ?」
ティークと共にラブを守るT2。
その身体には、無数のパワーチップが組み込まれており、破壊的なパワーを持つ。
また、メカや分析の技術もピカイチであった。
「暗視モードでも見えないってことね。当日の天気は?」
「何れも雲一つない晴天の夜なんだが…」
サブスクリーンに映像が、映し出される。
深夜2時。
灯りは少なく、車もほとんど走っていない。
しかし、確かに人々はいた。
その間約10分。
突然町全体が暗闇に包まれ、次に現れた町は、衛星画像でさえ、異様に見えた。
「だれも…何も…いない」
「生体反応ゼロでございます、ラブ様」
世界最高頭脳のヴェロニカが、さらりと言う。
表向きはラブのマネージャーでもある。
非科学的な事象を簡単に認める頭脳ではない。
「珍しいわね、貴女が否定しないなんて」
「まだ…肯定したわけではございません。必ず何か原因があるはず」
「ペルー政府は、詳細は敢えて伏せておくつもりの様だが、情勢は穏やかではない。軍を首都リマ周辺に集結させて、臨戦態勢に向かっている」
「共和国とは名ばかりの不統一国家でございます。もし次に何か起これば、動かずにいるとは思えませんわ」
しかし、二つ目の事件以来、幸い何も問題は起きておらず、周辺のチリ、ベトナム、ボリビア、コロンビア等は、警戒態勢のまま静観していた。
(おかしい…)
(はい。ラブ様、私もそう思います)
ラブとマザーシステム、AIの『会話』である。
「T2とアイは、監視と映像の解析を続けて。ティークとヴェロニカは、ロシアへ」
「ロシアへ?里帰りでもしろとおっしゃるのでしょうか?」
先の戦いで、ヴェロニカの両親は死に、ロシアの官房長官であった父、ラルフ・ヴェノコフが、宿敵HEAVEN《ヘブン》の主導者であったことが判明した。
「辛いでしょうけど、あの組織が完全に滅んだという確信はないの。ラルフの意思を継ぐ者がいないか、探ってください」
「お気遣いは無用でございます。私もラブ様に命を救われた一人。この命はその時から、貴女様に捧げるつもりでおります。少し気になることもありますから、行って参ります」
本心である。
強いて言うなれば、愛するティークと二人で、ということも、許諾した理由の一つ。
…顔には出さないが。
(殿方と二人っきりの里帰りなんて…💖)
(心を読む気なくても、伝わるんですけど💧)
「ま、まぁ…とにかくよろしくね💦」
「アイ、レムについても銀河史を調べておいてください」
「…了解しました」
(…な…に?)
ほんの一瞬、違うものを感じたラブ。
(気のせいか?…アイに限って…考えすぎね)
【レム】
銀河史上最悪の、侵食型エネルギー生命体。
その実態は謎に包まれたままであった。
「やはり…ヤツか?」
T2が目を閉じる。
「いや、ヤツならとっくにこの星は滅亡しているだろう。あのペルシオス銀河を絶滅させたって噂だからな」
そう言うティークの思考も定まらない。
「そう…何かが違う気がします。とにかくみんな気をつけて」
なぜ『気をつけて』と言ったのか分からない。
ただ…外れたことのない嫌な予感がしていた。
部屋を出て、エレベーターに乗ったところで、ラブの携帯が鳴った。
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