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〜東京駅〜
深夜だというのに、大勢の人が集まり、職員や警備員、警察官が対応に追われていた。
「新幹線に乗ったきり、娘がまだ帰って来ないんです!」
「なんか事故でもあったんだろう❗️ちゃんと説明しろっ❗️」
不満と不安の声が重なって騒ぎになっている。
そんな中、ラブの車が停まった。
(ラブさん、こっちこっち)
ラブの頭に、『声』が届いた。
(昴さん、何があったの?)
神崎昴。
殺人鬼に刺され、一度命を落としたが、ラブが自ら血を輸血し、生き返らせた刑事である。
その結果、ラブの持つ特殊能力を幾つか受け継いでいた。
社員専用の入り口に、昴がいた。
車を降りて中へ入る。
「あの人達はどうしたの?」
「僕もまだ着いたばかりで、説明するより見てもらった方が早いと思います」
整備用の車庫に、切り離された車両が一両。
鑑識班が何人か作業をしていた。
「ラブさん、深夜にすみません」
呼び出した紗夜の心から、事の深刻さが伝わって来た。
「あ、ラブさん。いらっしゃい」
ベテラン刑事の鳳来咲である。
「咲さんまで、ご苦労様です」
「ホントよ、全く。寝ようとしてたら、これなんだから、寝不足はお肌に悪いのよね〜」
愚痴りながらも、シッカリ化粧し、いつものミニスカ&ハイヒールで駆け付けたところは、さすがだと思った。
「とにかく、見てください」
紗夜が促し、車両へと入る。
「これは!」
一瞬は、映画やドラマのセットかと錯覚した。
が、次の瞬間に浮かんだのは、ペルーの事件である。
「信じられませんが、この車両だけ、皆んな消えてしまった様なんです」
「昴さん、では表の人達は…」
「この車両で東京に着くはずだった人達の、家族や関係者の皆さんです」
対応に困るのも当然である。
「まさか、消えました!なんて言えないわよね〜JRさんお気の毒様」
「咲さん、ひと事じゃないですよ、次の矛先は警察なんですから💦」
「だよな、全く。朝には記者会見となるだろうが、どうします、咲さん?」
欠伸を堪えながら、お手上げ状態の淳一。
「いや〜本っとに参ったぜ」
「豊川さん」
「おっ、ラブさん来てくれたのか。とりあえず、血痕は見当たらず、傷害の事件性はないが…こんな不可思議な事態に、怪しい痕跡が何もねぇってのは、逆に怪しいよな」
「今のところ、新横浜駅の監視カメラ映像では、満席に近い状況であったことを確認できてんだけどね〜」
「咲さん、TERRAも捜査に協力します。昴さんに手伝って貰ってもいいですか?」
「そうね、警察との仲持ちも必要だから、昴、ラブさんと捜査して」
「分かりました。よろしくお願いします。」
ラブの意図は、既に昴に伝わっていた。
こうして、再び警察とTERRAの合同捜査が始まったのであった。
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