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〜東京銀座〜
飛鳥組傘下の鬼島組本部ビル。
今は亡き鬼島組長。
その後を託された飛鳥神は、組員の頼みを快く承諾し、看板はそのままとなっていた。
その前に一台の黒いBMWが停まった。
助手席と後部座席から2人の外国人が降りる。
1人は長身、もう1人は対象的に背が低く、義足の足首が裾から覗いていた。
まだ遅い通勤組もいて、人通りは多い。
だが、その異様な雰囲気に、皆んな2人を大きく避け、見ないフリで通り過ぎる。
自動ドアが開き、義足の男が先に入り、もう1人も後に続く。
「なんだぁ?…って💦、えっと…ニッポンゴ…ワカリマスカ?」
異様な雰囲気に、一瞬無意識の警戒心が走る。
が、それ以上に、慣れない外国人に対する焦りの方が勝った。
「キジマ、イルカ?」
(話せるじゃん💦)
「う〜ん…わかるかな?、キジマ…ボスハ、ん〜と💦、モウイナイ」
「そんなんで、わかるんか?」
焦る若者に、もう1人が加勢する。
「イナイ?」
「そうそう❗️ほら、通じるじゃねぇか」
「ドコニ、イルカ?」
「えっと、待てよ…どこに?と来たか💦」
その時、BMWの後ろに緑のベンツが停まった。
(ん?)
後部座席で飛鳥組若頭、飛鳥神の目が細まる。
「神さん、ここにVIPな客は珍しいっすね」
振り向く運転手……💧
「あのね神さん。やっぱり緑のシートに、緑のスーツって保護色コーデ、やめません?」
「仕方ねぇだろが、赤のベンツは修理中なんだからよ」
「いや💦そういう問題じゃなくてね」
「原田、BMのナンバーメモっとけ」
「神さん、今時はスマホカメラです…って、初めて名前呼んでくれましたね!」
「ぁあ?そうだったか?」
確かに初めてである。
凄腕専属ドライバー原田岬。
「どうせ誰かさんが、忘れてただけじゃねぇか?」
………💧
さすが、鋭い神💦
車を降りた時、ドアが開き、2人が出て来た。
お互い視線は交わさず…すれ違う。
この時、神の意識は2人ではなく、背後から攻め寄せる様な、異様なモノに向いていた。
ドアが閉まる。
(なんだ…あれは?)
神のこめかみを、一筋の汗が流れ落ちた。
「神さん! いらっしゃいませ」
「…今のは?」
「大変でしたよ、もう💦何とか日本語が通じたみたいでしたけど、焦ったわ〜いきなり外人さん来るなんて聞いてないし、なぁ」
もう1人も疲れた顔でうなずく。
「そうか、…で?誰なんだ?」
「……エッ?」
(マジかお前ら…💧)
「全く、なら要件は?」
「それが…鬼島の親分を訪ねて来た様で、いきなり死んだ!なんて言うのもなんだと思って、イナイって答えたんですよ。いや〜要らぬ気は遣わねぇ方がいいっすね💦、そしたら、ドコニイル?って来やがった!ドコって言われてもなぁ…」
もう1人も、うんうんとうなずく。
「そっからがてぇへんで…」
「分かった分かった、もういい💧。とりあえずは無事でよかったぜ、全く」
「はい。神さんも知らないっすよね?」
「義足の奴はな」
「義足🦿?そう…でしたっけ?気付かなかったな〜さすが神さん❗️」
(はぁ…幸せな奴らだぜ)
「先日の鬼島の命日に、ちょっとゴタゴタしてて来れなかったから、線香でもと思ってな」
「ああ、あの時はマジ東京ヤバかったっすからね〜。わざわざご苦労様です。親分もきっと喜びます」
微笑む鬼島の顔は、全く想像出来なかった💦
正直、数える程の面識も無い。
ただ一度面を合わせただけで、信頼に足る人間だと言うことは分かった。
線香をあげ、『見舞金』の束を渡す。
「助かります、神さん。ご苦労様でした❗️」
深礼する留守番の2人を背に、ビルを出る。
ふと、BMW…いや『何か』がいた空間を見つめる神。
修羅の道を生き抜いて来た天性の勘が、得体の知れない恐怖を感じていた。
「神さん、どうかしやしたか?」
「いや、何でもねぇ」
吹っ切る様にひと息つき、車に乗り込む。
「写真は撮ったか?」
「もちろんですよ。ついでにあのヤバそうな2人も撮っておきやしたぜ。神さんの携帯へ送っときました」
「やるじゃねぇか、原田!今から、TERRA《テラ》へ向かえ」
知らせるべきモノだと、直感した神であった。
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