182人が本棚に入れています
本棚に追加
「有紀乃、どうしたの?」
「郁人が不倫してた。男と。」
「え?男と?」
「うん。同性愛者だったんだって。女は愛せないのに、世間体のためだけに私と結婚したんだって。最低だよね。」
「うん。最低だね。…でも、少し旦那さんもかわいそうな気がする。」
「…え?」
「だって、旦那さんは同性愛を隠したって事は色んな偏見に押し潰されて生きてきたってことだよね?それで、世間体のために無理に愛せない女を愛するしかできなくなった。やっぱり少数派は悩みが多そう。」
「…そうだね。」
私はそのまま電話を切った。この前まで私の側に立って同情していた人が、今度は旦那の側に立って同情した。
なんだこれ。被害者は私じゃないのか?郁人はずっと偏見の被害に遭ってきたんだからって飲み込まなきゃいけないのか?
なんで同性愛者だったって理由だけでただの不倫男が私よりも同情される?私は不倫されてなお郁人の気持ちを理解しようと努力しないといけないのか?
この世界がなんなのかわからなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!