愛のカタチ

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 ビーっ!  竹郎が空港の税関検査場のゲートをくぐった瞬間、警告音が鳴った。  ゲートの赤色灯が赤く光り、いけないんだ~いけないんだ~、と囃し立てているようだった。竹郎は何の心当たりもなく緊張した。 「Come here.」  ゲートをくぐった左側にカウンターがあった。カウンターの向こうから税関検査官が竹郎にカウンターへ来るように手招きした。サングラスをかけ、青い制服を着た、シュッとした女性検査官だった。  顔は全然違うのかもしれないが、そのシュッとした立ち姿に竹郎は、映画『トゥームレイダー』の『アンジェリーナ・ジョリー』を思い出した。 「Put the metal belongings here and pass through the gate again.」 「えーと」  税関で止められたという予想外の事態と、不慣れな英語に竹郎は戸惑った。  すると税関検査官の横から、 「金属製のものをここに置いてください」  と、小柄な女性が声をかけてきた。 「え、あ、はい」  あ、日本語だ。混沌の世界に一筋の光、ホッとして竹郎はその指示に従った。 「私はこの税関検査場で通訳を担当しています、チャンです」  チャンはふくよかで、手招きした検査官とは対照的な、柔らかい立ち姿をしていた。 「こちらは税関検査官のキャメロンです」 「Hello.」 「は、はろー」  よかった。とりあえず通訳を介してでも言葉がわかるということに、竹郎は安心した。
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