13人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
ビーっ!
竹郎が空港の税関検査場のゲートをくぐった瞬間、警告音が鳴った。
ゲートの赤色灯が赤く光り、いけないんだ~いけないんだ~、と囃し立てているようだった。竹郎は何の心当たりもなく緊張した。
「Come here.」
ゲートをくぐった左側にカウンターがあった。カウンターの向こうから税関検査官が竹郎にカウンターへ来るように手招きした。サングラスをかけ、青い制服を着た、シュッとした女性検査官だった。
顔は全然違うのかもしれないが、そのシュッとした立ち姿に竹郎は、映画『トゥームレイダー』の『アンジェリーナ・ジョリー』を思い出した。
「Put the metal belongings here and pass through the gate again.」
「えーと」
税関で止められたという予想外の事態と、不慣れな英語に竹郎は戸惑った。
すると税関検査官の横から、
「金属製のものをここに置いてください」
と、小柄な女性が声をかけてきた。
「え、あ、はい」
あ、日本語だ。混沌の世界に一筋の光、ホッとして竹郎はその指示に従った。
「私はこの税関検査場で通訳を担当しています、チャンです」
チャンはふくよかで、手招きした検査官とは対照的な、柔らかい立ち姿をしていた。
「こちらは税関検査官のキャメロンです」
「Hello.」
「は、はろー」
よかった。とりあえず通訳を介してでも言葉がわかるということに、竹郎は安心した。
最初のコメントを投稿しよう!