18人が本棚に入れています
本棚に追加
勝負好き
彼女は勝負事が好きな性格であった。ことあるごとに勝負を挑んでは、勝った負けたの大騒ぎ。
幼なじみの僕は新年早々そんな彼女の餌食になり、すっかり辟易している最中だった。
「勝負よ、勝負。書き初めで勝負しなさい」
意気揚々と学校で使っている書道セットを見せつけながら、彼女が迫ってくる。
「どれだけ速く書き初めが書けるか――」
そこまで彼女は言いかけ、言葉を切った。
きっと僕のうしろの壁に貼ってある書を発見したに違いない。僕が今朝書いたものを。
「勝負あったかな」
と鼻を高くする僕。
「くっ。次は勝つんだから」
戦わずして勝った僕を一睨みすると、彼女は帰っていった。
「やれやれ。彼女のせいで、僕もすっかり勝負好きになったなあ」
彼女の背中を眺めながら、しみじみとつぶやいた。
お題:「書き初め」×「勝負事」
最初のコメントを投稿しよう!