勝負好き

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勝負好き

 彼女は勝負事が好きな性格であった。ことあるごとに勝負を挑んでは、勝った負けたの大騒ぎ。  幼なじみの僕は新年早々そんな彼女の餌食になり、すっかり辟易している最中だった。 「勝負よ、勝負。書き初めで勝負しなさい」  意気揚々と学校で使っている書道セットを見せつけながら、彼女が迫ってくる。 「どれだけ速く書き初めが書けるか――」  そこまで彼女は言いかけ、言葉を切った。  きっと僕のうしろの壁に貼ってある書を発見したに違いない。僕が今朝書いたものを。 「勝負あったかな」  と鼻を高くする僕。 「くっ。次は勝つんだから」  戦わずして勝った僕を一睨みすると、彼女は帰っていった。 「やれやれ。彼女のせいで、僕もすっかり勝負好きになったなあ」  彼女の背中を眺めながら、しみじみとつぶやいた。  お題:「書き初め」×「勝負事」
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