さきもと

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さきもと

ガタイのいい50代位の強面な男が座った椅子がぎしりとしなった。それは小さな取調室の中で大きく響いた。 「落ち着いたようなので、これから少しお話聞かせてもらうな。」 私に声をかけ逃げだした男が警察に通報してくれた。死体の目の前に座り込んでいる女がいる。と... 私が容疑者として疑われるのも無理はないだろうと腹をくくり次の言葉を待った。 刑事は机の上で手を組み、私の目を見つめ言葉を繋いだ。 「お名前は?」 「金蔵彩海です。」 「おいくつ?」 「26歳になります。」 「身分証はもってる?」 「免許証あります。」 机の上に置かれた自分の鞄をとり、財布を取り出す。 免許証を出し、刑事に手渡すと一通りみて話した言葉と証明写真が相違ないことを確認したのだろうちらりと私を見た。 嫌だな。証明写真犯罪者みたいな目つきの悪さしてた気がする...と少し免許更新をした日の自分を恨みながらじっとしていると刑事は免許を私の後ろに待機していた人に渡した。 「あの場所にはなんでいた?」 じっと皺が癖になった眉間の下にある目に見つめられ、はぁと息を吐いた。 「飲んでて、家に帰る途中でした。あと、私が殺したのではないです。」 「あのガタイの被害者をいくらビルとビルの間でも人気のある繁華街の近くであんたのような女が周りに気づかれずに殺せるとは思ってないが...一応な。どこの店から?」 「山田ビルの3階ミラってバーです。」 店の名前を言いながら、マスターに連絡したほうが良いかと思いながらカバンを見たら携帯がないことに気づいた。 「あの、私の携帯知ってます?」 「いや、荷物はここに来るまで触っていない。」 確かに、私が崎本が殺されていた場所からパトカーにのせられ、ここに来るまで鞄は婦警が持っていたものの中身を開けられたような記憶はなかった。小山内か。と舌打ちしたい気持ちを抑え次々と詳細を聞いてくる刑事の質問に答えた。 しばらく所謂アリバイ証明をしていたら、お腹がギュルっと空腹を訴えた。 「あの。私犯人は知ってます。」 私の言葉にあんなに、深かった眉間のシワがほぐれ、ぽかんっと口を開けた刑事に人間らしいところもあるもんだと思いながら、言葉をつなぐ。 「私の元旦那で...です。」 「そいつの名は?」 「小山内紫輝」 その人物の名前にまた眉間のシワが寄ったがわかった。 「...なぜそいつだと?」 会ったんです。そう告げようか悩んだときに、辞めた。そんなこと言ったら面倒なことになる。消して警察に協力したくないわけでもないし彼を引き渡したくないわけではなく、私はある一人の人物に彼を探すように伝えている。 その人物より先に警察に小山内が捕まってしまえば私には警察の前でしか小山内と会えなくなってしまう。できればそれを避けたかった。 「あの趣味の悪いネクタイ。あれ私が彼にあげたんです。しかも手作りだから他の人が持っているはずがない。」 「そうか。...小山内と崎本との接点は知っているか?」 「わかりません。」 刑事の顔の前で組まれた指が解け頭を掻いた。 崎本を知っているかと聞かれ、以前ジムでであってから何度かお会いしたことはあります。とつたえた時大きな音でお腹がなりまたしても小さな取調室にはよく響いた。 「時間取らせて悪いな。小山内の連絡先や今の住所はわかるか?」 「いえ。離婚してからはなにもわかりません。...あの、◯✗市の元刑事の神成秋人さんご存知でしょうか?今ここらへんで探偵してる。」 「あぁ。聞いたことはあるな。そいつが?」 「あの人半年前の◯✗市の殺人事件...犯人はまだ見つかってないやつ小山内のこと疑ってて。けど小山内には、明確なアリバイがあって警察ではこれ以上小山内の事は調べられないから。って、調べるために探偵なったって聞いてます。何度か小山内のこと聞かれて...その人のほうが小山内のこと少しはわかるかも...しれないです。」
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