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私はこれでもかってほどに丁寧に化粧をし、綺麗な服を着て繁華街のビルの小汚いエレベーターに乗った。
初期化され、ブルーの待受画面の携帯からは2時12分を表している。
神成との待ち合わせの店の扉には暗証番号を入力する鍵がつけられている。
慣れた手つきで『0715』と、入力し鍵がガチャリと開く。
扉を開けばこじんまりとした店内のカウンターに猫っ気の茶髪が見える。神成が居るのはすぐ分かった。
「おそなーい。」
間抜けな声を出しこちらにひらひらと手を降った神成以外に客はいなく、神成の隣を1つ開けて座る。
「あいつ、家に来てた。」
そのまま初期化された携帯の下にメモ用紙をおき机に置く。
いらっしゃい。彩海さん。と私に向かってお絞りを差し出すピンク髪の顔面ピアスだらけのゆうきとしかしらない私より若そうな店員にビール頂戴。とだけ伝えて鞄から出したタバコに火をつける。
「そんなことより、どゆこと?なんであのあんちゃんは殺されたん?」
私がおいた携帯を弄りながら聞いてくる神成は楽しそうに口角を上げている。
「さぁ、私と寝たからじゃない?」
「うっわ。恥じらいもってやぁ」
私の答えに驚いたふりすらしたものの、眉一つも動かさずに答えた神成にわかってるくせに。と言いたくなりながらも、頂戴ビールが来たから辞め、そのまままビールに口をつける。
「ほんで?運悪く仏様見つけてしもて警察様に行く羽目なったん?」
「運悪くねぇ...」
運悪くなんてもんじゃない。崎本の住む場所はこの繁華街から車で20分はかかるそこそこいい土地の住宅街だ。
「君のダーリンは君が飲みに出るのも飲みすぎるのもよう分かっとるってやつかいな。
あのあんちゃんの車は家にあったらしいでー。」
私の考えてることを見透かしたかのようにニヤッと私を見て笑う神成の目はただでさえ切れ長いだけで消して大きくはないため眼球は見えない。
「て!ゆうか1時間遅刻したことに対してと俺を警察様に売った謝罪待っとるんやけど?」
ひどいわぁ。としょげてみせる神成に私はまたビールを飲み心なく答える。
「え?あぁ。ゴメンナサイ」
「殺られてもうたあんちゃんに世帯があることはご存知で?彩海ちゃん」
真剣な顔で私を見ながら、弄っていた携帯を私に返しながら聞いてくる神成にええ。と返事をする。
「崎本良二、34歳。ジムの責任者及びインストラクターで奥さんは絵美31歳。3歳と4ヶ月の子供がおる。そんなんわかってて寝たん?」
「そうゆうことになるわね。」
「なんで?」
「なんとなく。」
「彩海ちゃんのなんとなくはなんとなくやないからなぁ。ちゃんと話してくれないと協力せんよ。」
うーん。と腕を上げ体を伸ばす神成の仕草を見て、崎本との馴れ初めを思い出す。
「最初は別にそんな気なかったの。」
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