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昨日の彼女になりたいアピールだって、冗談だと言ったハズなのに。
「そういえば、LINEの交換してなかったっけ……」
メモ用紙を見ていて、ふとそのことに気がつく。こんなふうに手書きのやり取りなんて、いつぶりだろうか。
(ちょっと待って! 佐々木先輩からのコレに、返事をしなければいけないのかな。LINEのやり取りだと、スタンプなんかで気軽に返信できるけど、手書きで返事なんてそんなこと――)
「うわぁ、なんてことをしてくれたんだ、あの先輩は!」
現在進行形で抱えてる急ぎの仕事よりも、ミッションの高い返事に、めちゃくちゃ頭を悩ませながら、企業名がプリントされているメモ用紙に、ありきたりな文面を丁寧に書き込む。
それを二つ折りにして、佐々木先輩が戻る前にデスクに置き、ふたたび自分の席に戻った。今日使うであろう集中力の半分を削る原因になった、佐々木先輩からのメモ用紙を、容赦なくシュレッダーにかける。
誰かに見られて、変にウワサをされたくなかったから。佐々木先輩の相手が私なんて、誰が見ても月とスッポン。似合わないことくらい、わかっているつもりだった。それに――。
「恋愛はもうしばらく、したくないんだよね……」
おふざけで彼女に立候補した手前、そんなことを佐々木先輩に言えるわけがない。
♡松尾が書いた手書きのメモ用紙については、応援特典でお披露目する予定です
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