次の日の出来事!

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「佐々木先輩、面白いから付き合うことに決めたなんて、正直信じられません」  素直な気持ちを堂々と口走ったら、メガネの奥の瞳が意味深に細められた。まるで獲物に狙いを定めるようなそれに、嫌な予感しかしない。昨日の居酒屋でも垣間見た表情だっただけに、気を引き締めて口撃に備える。 「松尾は俺を信じられないから、さっさと捨てて、玉の輿に乗るつもりなのか?」 「乗りませんよ、そんなもの」  端的な私の返答を聞いた途端に、佐々木先輩の目尻が嬉しさを表すようにさがった。それだけで漂っていた雰囲気がガラッと変わる。 「松尾のそういうところに、俺は惹かれたんだって。普通は玉の輿に乗るために、喜んで平社員の俺を捨てるだろ」 「そんな理由で捨てたりしませんけど、イケメンな佐々木先輩とのお付き合いは、いろいろ恐れ多くて、できそうにないです!」  私なりに、佐々木先輩との交際をキッパリお断りした。これ以外のお断りする言葉が見つからなかったせいで、説得力がなかったせいか、佐々木先輩は不思議そうな表情で首を傾げる。 「自分から俺に迫っておいて、恐れ多いなんておかしくないか?」 「だって、どう見ても不釣り合いですよ私たち」 (傍から見たら、佐々木先輩のようなイケメンが、私のような凡人と付き合ってるなんて絶対におかしいと、間違いなく思われるはず。お金でも渡して、無理やりつきあってるなんて想像されたりして) 「不釣り合いなんて、俺は人の目なんか気にしない……」 「私はすっごく気にします!」  両手に拳を作りながら断言したら、背を預けていた扉から体を起こして、私を見下ろした。メガネの奥から注がれる、熱のこもった佐々木先輩のまなざしから、なぜだか目が離せない。 「はじめてなんだ!」  珍しく声を荒らげた佐々木先輩は、告げたあとにハッとして、頬を真っ赤に染めた。どこか初々しさを伴うその姿に、思わず――。 「やっぱり童貞……」 「違う違う、そうじゃない。おまえと喋ってると、どうにも調子が狂ってしょうがないな」 「鈴木雅之の歌でも歌いますか?」  照れて錯乱している佐々木先輩を和ませるべく、思いきって変なことを言うと、左手にエアマイクを持つ格好をわざわざしてくれた。結構ノリのいい先輩らしい。
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