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「ふんわりー♪とろとろー♪ふんふふーん♪おやこどぅーん♪」  ほかほかのごはんにできたてとろとろの親子丼の具を乗せていると、歳の離れた妹からメッセージが届いた。 『おねえちゃん、こないだのアプリやってる?ミニゲーム協力してほしいんだけど!』  毎日ログインしてます。  しないと……おそろしいことに画面から雪が出てくるんですよ。 『れいな、おかえり』  妹のメッセージには返信せず、とん、とアプリをタップするとすぐに美声が聞こえる。  おなじみジュリオ・エンディミオン氏である。  にゅるりずるりと画面から出てくるのも、最近では見慣れた光景だ。 「ああ、れいな、18時間ぶりだね……会いたかった……」  立ち絵よりもずっと美しい男は片眼鏡を外しテーブルに置くと、玲奈にさっそくのしかかってきた。 「まってまってジュリオ氏! 見て! ごはんを作ったの! あったかいうちに食べようよ!」  すでに玲奈のTシャツをまくり上げブラに手をかけているジュリオを必死に止めて、片眼鏡を置かれたテーブルを指さした。  ほかほかの親子丼が2つ、並んでいる。 「ジュリオ氏、鶏肉が好きって言ってたからさぁ、鶏肉の料理作ったんだよ! いっしょに食べよう!」 「れいな……私のために……?」  感激してキスの雨を降らせてくるジュリオをなだめて長い足を無理やりたたんで座らせた。 「なんておいしいのでしょう……! たまごも好きなのです。れいな、ありがとうございます!」  スプーンを握りしめてにこにこ笑うジュリオのために、ダイニングセットを買おうかな?  玲奈は箸で親子丼を食べながらそう思った。  玲奈もなんだかんだジュリオがいる毎日を楽しんでいる。  でも……でもね。  ジュリオの分よりごはんを少なめにしていた玲奈が先に食べ終わり、ミニゲームとやらを見てあげようとスマホを操作しようとすると、 「浮気ですか」  とジュリオから冷たい声がかかった。  ジュリオ氏、雪が出てます!  親子丼が冷めちゃうよー! 「ちがうの、ミニゲームに協力してって……妹が……」  ぱくぱくと親子丼を平らげたジュリオ氏は、おいしかったです、と美しく微笑んで、スマートフォンを握りしめた玲奈を抱き上げた。 「ジュリオ氏?」 「では協力してあげてください。できるものなら、ね……ふふふ……」   「ジュリオ氏ー?! あっ! まっ」  そっと玲奈をベッドに横たえ、炸裂! ジュリオ・エンディミオンの匠の舌遣い!!!     「れいな? ゲームはどうしました?」 「むりだよ……ジュリオぉ」  燃え上がってしまった熱をなんとかしてほしくて、玲奈はジュリオの背に腕を回した。  いつもこの調子なので、ミニゲームは難しいです。  みーちゃん、ごめんね……!    熱いくちづけを交わし、お互いシャツを脱ぎ微笑みあった、その時だった。 『女だぁぁぁぁ!』  張りのある声とともに、枕元に放り投げていたスマートフォンからずぼっと手が出てきて、玲奈の胸をむぎゅっとつかんだ。 「きゃーーーー!?」  人影が画面からにゅるりっと勢いよく飛び出して、もう片方の手は顎をつかまれた。 「お、おんな!おんなだ!」  つんつんと立てた真っ赤な髪、黒い瞳に浅黒い肌。  襟を寛げた騎士服姿の彼、はーーー 「アクセル・グランディス! 私の妻に何をする!」  ジュリオの魔術で顔に雪玉が炸裂したのは、攻略対象の騎士、アクセル・グランディス(18)だった。  こ、こんなキャラなの? 「おんなだ!」て、乙女ゲームの攻略対象のセリフじゃないよ!
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