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『いやぁ、間一髪でしたね』
ナビの声に目を開くと、酷く機械的な空間にいた。見覚えがある。異世界旅行への出発ゲートだ。
「助かった…」
その呟きと同時に、堤の頬に何か生暖かいものが触れた。嫌な予感がしつつも生暖かさを感じた方へ顔を向ければ、先程見かけた岩のような獣がいた。どうやら見た目に反して、温かいらしい。
「⁉︎?」
『あー、一緒に転移しちゃったんですね〜』
「帰してきて!帰してきて!」
ベロベロと、舌で頬を舐める獣を押し退けようとしたが無駄だった。ここは見た目通り、凄まじい重量であるようだ。
「助けて〜!」
堤の悲痛な叫び声が機械の駆動音にかき消された。
終
※異世界の獣はこの後、責任を持って旅行会社が元の世界に戻しておきました。
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