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⑶
我妻は案外話しかけると普通なやつだった。自分から話しかけたり笑ったりはしないが噂で聞くものではなかった。我妻の噂は喧嘩を好む極悪人などと聞いていたがそんな様子もない。
周りが勝手に怖がっているだけで喧嘩しかけてくるやつもスルーしてるみたいだ。
「なぁーなぁー我妻ってさ、将のことどう思ってるんだ?」
将が委員長のとこに行ってて居ないことを良いことに、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
本当はどうでも良いことなのに。普段の俺なら絶対に面倒だから聞かないのに。
なぜ聞いたか分からないけど、聞かずには居れなかった。
「‥‥‥」
「‥‥好きとか?」
「‥‥‥安心しろよ、その感情はない。」
「え?あ、いやそういう訳じゃないけど‥‥」
「‥‥ただ、あいつは俺を怖がらなかった。普通なら、近付きもしないのにな。‥‥友達としてなら好きだ。」
出会った時を思い出してるのか、あまり表情を崩さない我妻がわかるかわからないかぐらいに微笑んだ。
「っ‥‥」
初めて見る我妻の表情はいつも無表情な表情とは全く違うものであって、見とれてしまった
「‥‥‥小諸?」
「あ、いや。そうか‥」
「だから、頑張れよ小諸。きっとあいつなら気持ちわかってくれる。」
「‥‥‥」
「小諸は良いやつだから大丈夫」
そう言った我妻の表情が若干悲しそうに見えるのは俺だけなのか?始めてみる表情に何とも言えないでいると後ろの方から、将のバカでかい声が聞こえてきたと思ったら我妻に思いっきり抱きついてきやがった。
「ずるいぞ誠治!!恵人と2人っきりで話すなんて~。」
「いやいや、将が居なくなったからしょうがないだろ~」
「ダメって言ったらダメ!!」
「‥‥おい、離れろよ」
「またまた、恵人くんは照れちゃって~」
「‥‥馬鹿か」
「ほらー離れろよ将」
「やだね!!」
将が戻ってきたことによって、また俺たちにいつもの空気が流れ込む。将と一緒になって騒いで、呆れてる我妻。ほら、いつもの通り。
だけど、俺の頭の中は先程の我妻の言葉と表情が忘れられない。
なんで俺に優しくしたのか。なんで、あんな悲しそうな表情だったのか。
それだけが気になって我妻のことが前よりも頭から離れなくなった。
あの表情は、将に向けてなのか?俺が将のこと気になってるってわかってる。
なあ、我妻‥。
お前は将が好きなのか?
もやもやが日増しに強くなってくる。たまに我妻が将に微笑むことにもイライラする。
俺はただ面白そうだから、つまらない日常が楽しそうだから、2人に関わったわけなのに。
我妻の微笑む姿に見惚れている自分が居た
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