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……どれくらいの時間が流れただろう。
そのあと結局、せっかく掴んだ千載一遇の大当たりは、数回続いた後に通常の回転に戻っていった。
きっと、いくらかの金額は取り戻せていたと思う。間違いなく学費分は取り返せていた。充分過ぎるほどの回収。
──魔物から逃げ出す絶好のチャンスだった。
しかし、俺はすでに“迷妄”に囚われ過ぎていた。
「大当たりの確率はわずか1/299。俺はもう1000回転以上も回しており、こんなにも資金を費やしている……次はもっと早く当たるのでは?」
「そうだ、間違いない」
「すぐに当たるに違いない!」
浅ましい考えが脳裏をかすめ、やがてそれは、すぐに脳内すべてを覆い尽くす。
欲にまみれた俺は、すぐさま魔物から排出された玉たちを左手で乱暴に鷲掴み、もう一度魔物の口に流し込んだ。
いつの間にか煙草は最後の一本になっていた。情感もなく口に咥える。大きく息を吸い込みながら、オイルの切れかかったライターで乏しい火をつける。
吐き出した煙のなかに見る眼前の“遊戯台”は、まるで遠くに映る蜃気楼のように霞んで見えた。
<了>
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