チョコチップクッキー

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「トモ、くん……?」 とろんとした目で友季を見上げる舞に、 「……っ」 友季はまた手を伸ばしそうになったが、それをぐっと堪えた。 そのままソファーから慌てて立ち上がり、 「風呂の用意してくるから、舞はゆっくりしてて」 逃げるようにバスルームへと向かった。 浴槽を軽く洗い、シャワーで泡を流して。 シャワーヘッドをホルダーにかけて、お湯を張るために蛇口のハンドルを(ひね)り―― “シャワー”から“カラン”へ、レバーを切り替えるのを忘れていたので、 「うわっ!」 友季は頭から盛大に水を被った。 先程使用していた余韻で、出てきたのはまだ温かいお湯ではあったが、涼しくなってきた今の季節は、濡れた服がすぐに冷たくなる。 慌てて水を止め、 「動揺しすぎだろ、俺……」 余裕のなさすぎる自分に心底うんざりした。 もうこの部屋に住んで数年が経つが、こんな初歩的なミスは今回が初めてだった。 リビングの方から、とたとたと足音が近付いてきて、 「何か悲鳴が聞こえたけど――って、大丈夫!?」 髪から水が(したた)り落ちている友季を見た舞は、近くにあったバスタオルを慌てて手に取った。 それを友季へ差し出しながら、不思議そうに首を捻る。 「……水も滴るいい男ごっこ?」 「それは礼を言うべきなのか、突っ込むべきなのか、どっちなんだ?」 友季はタオルを受け取りながら、複雑そうな顔をした。
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