チョコチップクッキー

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友季はいつも通り舞に先に入浴するように勧めたのだが、びしょ濡れの友季が風邪をひくといけないからと却下された。 先に風呂から上がった友季は、 「本当に、どういう割合だったっけ?」 テーブルにノートを広げて(うな)っていた。 そのノートには、過去に友季が試作した菓子のレシピが、走り書きの文字でびっしりと書き連ねられていた。 探し出そうとしているのは、舞が食べたがっているチョコチップクッキーのレシピ。 思い出そうとして、 「……」 思い出せるのは、学校でクラスメイトからいじめられていた日々のこと。 いじめの原因は、友季の見た目が“キモい”とか“目障りだ”とかそういう理由だった。 床に蹴り倒されて鞄を取り上げられ、その中身を床にぶちまけられて。 そこに入っていたクッキーを踏み潰されないよう慌てて庇った隙に、ノートに挟んでいた新作レシピのメモを取り上げられた。 返してと叫んでも聞き入れてはもらえず、友季を(ののし)る言葉と、傍観しているクラスメイトのクスクスという嘲笑(あざわら)う声ばかりが響く教室内。
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