チョコチップクッキー

23/45
前へ
/270ページ
次へ
「トモくん? 大丈夫?」 友季がリビングのソファーで休んでいると、舞がバスルームから戻ってきた。 舞が友季の隣に腰を下ろした瞬間、 「舞」 友季が舞をぎゅっと抱き締める。 舞は友季の腕に抱かれながら、ちらりとテーブルの上を見た。 ケースに戻された卒業アルバムと、角がボロボロになった古いノートが置かれている。 「もしかして、私……トモくんに辛いこと思い出させようとしてる?」 舞が恐る恐る訊ね、 「……」 友季は黙った。 「あの……もうあの時のクッキーが食べたいなんてワガママ言わないから、だから――」 もう無理しないで、と言おうとして、 「……」 友季に真っ直ぐに見つめられていることに気付いて、口を(つぐ)んだ。 「確かに俺の今までの人生で、多分高校の時が一番辛かったと思う」 「……」 「でも、そんな時に舞と出会えたことは、物凄く感謝してるから」 友季の手が、舞の髪を優しく撫でる。 「あの時、俺の目の前で派手に転んでくれてありがとう、舞」 「……もっと違う理由で感謝されたかったかな」 舞は少しだけむくれたが、 「あの時舞と出会ってなかったら、多分今頃は凄くつまらない人生送ってたと思うから」 友季はにこっと優しく微笑んだ。 「俺は凄く幸せなんだなって、今気付いた」
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

717人が本棚に入れています
本棚に追加