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「トモくん? 大丈夫?」
友季がリビングのソファーで休んでいると、舞がバスルームから戻ってきた。
舞が友季の隣に腰を下ろした瞬間、
「舞」
友季が舞をぎゅっと抱き締める。
舞は友季の腕に抱かれながら、ちらりとテーブルの上を見た。
ケースに戻された卒業アルバムと、角がボロボロになった古いノートが置かれている。
「もしかして、私……トモくんに辛いこと思い出させようとしてる?」
舞が恐る恐る訊ね、
「……」
友季は黙った。
「あの……もうあの時のクッキーが食べたいなんてワガママ言わないから、だから――」
もう無理しないで、と言おうとして、
「……」
友季に真っ直ぐに見つめられていることに気付いて、口を噤んだ。
「確かに俺の今までの人生で、多分高校の時が一番辛かったと思う」
「……」
「でも、そんな時に舞と出会えたことは、物凄く感謝してるから」
友季の手が、舞の髪を優しく撫でる。
「あの時、俺の目の前で派手に転んでくれてありがとう、舞」
「……もっと違う理由で感謝されたかったかな」
舞は少しだけむくれたが、
「あの時舞と出会ってなかったら、多分今頃は凄くつまらない人生送ってたと思うから」
友季はにこっと優しく微笑んだ。
「俺は凄く幸せなんだなって、今気付いた」
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