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そんな舞の顔を、友季が両手で挟んで固定し、じっと見つめてくる。
「ちょっ、トモくん! 恥ずかしい……」
「はぐらかさないで、ちゃんと答えて」
友季の言葉で、少しだけ冷静になる。
……舞の顔に触れている友季の両手が小刻みに震えていることに、漸く気が付いた。
勢いで適当に言ったのではなく、とてつもない勇気を振り絞って言ってくれたのだと分かる。
「クッキーが再現出来なかったら、ずっと結婚しないままってこと……?」
先程の友季の言葉に引っ掛かりを感じていた舞は、潤む瞳で友季を見上げた。
その瞬間、
「……!」
友季の瞳が大きく見開かれる。
「……」
そのまましばらくの間、黙って舞の目を見つめていた友季は、
「バーカ」
不意に、ニヤリと笑った。
「お前、俺を誰だと思ってんの?」
「私の超絶イケメン彼氏」
真顔で即答した舞に、
「いや違う! あっ……いや、違わないけど、そうじゃなくて!」
首を横に振りながらも、嬉しそうにニヤつく口元を右手の甲で押さえた友季が、
「超人気洋菓子店の有名シェフなんだぞ」
ドヤ顔をキメながら(まだニヤつきが収まっていないことに本人は気が付いていない)胸を張った。
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