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「舞も一緒に寝よ」
友季のそんな声に、
「……うん」
舞は素直に頷くしかなくて。
いつものように、舞はベッドの中で友季に抱き締められる。
既にうとうとしていた友季はまたすぐに深い眠りに堕ちていき、
「……私だけ、馬鹿みたい」
舞は不満そうに唇を尖らせた後、
「おやすみ、トモくん」
どうせ届かないだろうとは思うが、一応は挨拶をして目を閉じた。
今日は色々あって疲れていたらしく、舞もすぐに静かな寝息を立て始める。
舞が眠りについてしばらく経ってから、
「……はぁ……」
友季が暗闇の中で瞬きを繰り返し、小さく溜息をついた。
本当は、舞の項でうとうとなんかしていなかった。
正直な気持ちを伝えてしまった後で、あの甘い空気に耐え切れず、咄嗟に寝たフリをしてしまったのだ。
あのまま舞の言葉を受け止めていたら、きっと今頃は舞に無理矢理迫っていたと思うから。
何よりも大切な舞と、その場の流れと勢いで……なんてそんないい加減なことは絶対にしたくなかった。
舞には、ムードクラッシャーだと思われてもいい。
寧ろ、そう思われた方が光栄なくらいだ。
「おやすみ、舞。愛してるよ」
友季が舞の髪を優しく撫でると、
「……ん……」
カーテンの隙間から射す月明かりに照らされた舞が、眠ったまま幸せそうに微笑むのが見えた。
(……可愛い。ずっと見てたい。ドキドキして寝られない)
明日は寝不足での出勤が確定したが、友季はそれすらも幸せだと感じた。
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