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友季が舞との思い出のクッキーの試作を始めてしばらく経つが、
「何か違うんだよな……」
友季の表情は晴れなかった。
「違うけど、これはこれで凄く好き」
友季の自宅キッチンで、焼きたてのそれをもぐもぐと頬張る舞は、友季とは反対に幸せそうな表情をしている。
「お前……結局、俺が作ったのは何でも好きなんだろ」
友季は次の試作品の計量を進めながら、呆れた顔を舞へと向けた。
「うん。好き」
「……っ」
舞の“好き”という言葉には、友季の心を乱すだけの破壊力がある。
それが友季自身に向けられたものではなくても、ついつい反応してしまう。
「それにしても……舞ってよく食べる割には細いよな?」
友季は今でこそ細マッチョと言われる体型を維持しているが、舞のように気にせず好きなだけ食べていたら、すぐに太ってしまう。
食べ過ぎたと思った時はしばらくカロリーを抑えた食事を心がけ、筋トレなどをして消費しているのに。
目の前の彼女は、そういうスタイルに関する努力をしているようには見えない。
「うーん……言われてみれば、気にしたことないかも」
舞は首を傾げながら、まだ温かいクッキーを皿から1枚摘み上げた。
それを口に運び、
「んふ。美味しい」
嬉しそうに笑う。
「まぁ……食べた分の殆どは胸に行ってるってことなのか?」
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