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真面目な表情に戻った友季に見据えられて、
「チョコチップ、戻さないで」
舞は友季の手元を指差した。
「昔食べたのって、チョコチップたっぷりだった気がするの」
「……あ」
舞にそう言われ、友季は全く思い出せなかった記憶の断片を思い出す。
どうせ誰も食べてくれないのなら、いっそ自分好みの贅沢なクッキーを作ろうと考えた。
「……チョコチップじゃない。俺が作ったチョコだ」
小さいチョコチップでは何だか物足りなく感じ、自分で手作りした板チョコを粗く刻んでクッキーに混ぜていた。
「トモくん、高校生の時に板チョコも手作りしてたの?」
自分が高校生の頃は、市販の板チョコを使ってお菓子作りをしていた舞。
そのチョコを自分で作ろうという発想そのものがなかった舞は目を丸くした。
「あの頃は何でも自分でやってみたかったんだよな」
今は経営者としてのツテで様々な原材料が手に入るので、チョコチップなんて自分では作ったりしない。
そこから作るとなると……
「選択授業、ショコラティエにしときゃ良かったかな」
専門学校生時代、ショコラティエ専攻科ではなくパティスリーを選んだ友季。
奥の深いチョコレートの世界を、そこまで追求して勉強していたわけではなかった。
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