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ホテルで働いていた時も、パティシエの友季とは別で、ショコラティエと呼ばれていた従業員もいた程だ。
「苦手なんだよな、チョコ扱うの」
奥深いだけでなく、繊細でセンスも必要になる作業。
「トモくんにも苦手なものあったんだ」
舞はまた目を丸くして友季を見つめる。
「ホテルで働いてた時にチョコのピエス・モンテ(工芸菓子)を作ろうとして、下手くそすぎてめちゃくちゃ怒られたんだよ」
あの時も散々いじめに遭っていたので、元々ロクな思い出がないが。
「あ。私、専門学校の卒業制作でチョコピエス作った時に優秀賞もらったよ」
「えっ、何それ凄い」
友季が、すぐ隣に立つ舞を尊敬の眼差しで見つめた。
「トモくんの苦手なチョコ細工は私に任せて」
にこにこと微笑む舞を、
「生意気。ムカつく」
友季はそう言いながら、壊れ物に触れるかのようにきゅっと優しく抱き締める。
「チョコピエスの注文が入った時は、舞に頼もうかな」
「うん。やりたい」
舞は相変わらず嬉しそうに微笑んでいる。
そんな舞の唇に、友季が引き寄せられるように自分の唇を重ねた。
軽く触れ合うだけですぐに離れて、角度を変えてまた優しく触れ合う。
「……ん……トモくん」
「……何?」
「クッキー……作んないの?」
キスの合間で交わされる会話。
友季は答えず、
「……んん……」
舞の中へと、舌を深く絡めた。
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