717人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数日が経ったある日のこと。
グルメ雑誌の編集社から取材の依頼があったので、友季は自分の店のカフェスペースに記者たちを招いていた。
それは割とよくあることなので、この日も友季はいつも通り質問に答え、取材を受けていた。
無事に取材が終わり、店の出入口まで記者たちを見送る際、女性記者の1人からこっそりと個人的な連絡先の書かれた名刺を渡された友季は、
「……」
ムッとしたまま厨房へと戻ってきた。
「シェフ……まさかそんな怖い顔でお店の宣伝をしたわけじゃないでしょうね?」
すぐに上田が声をかけた。
「今日来てた中に、すげー美人が1人いましたよね」
チャラい山田は、女性のチェックに抜かりがない。
「山田さん、あーいうのがタイプ?」
近頃、山田とは少し険悪な雰囲気だった友季が山田の目を見た。
「割とタイプですね」
「あの人、彼氏募集中らしいから、これやるよ」
友季が差し出したのは、先程女性記者から手渡された名刺。
「マジすか!」
山田が嬉しそうに受け取り、
「シェフ。流石にそれはちょっと」
木村が割って入った。
「俺は彼女がいるって言ってんのに、順番なんて気にしないからとか言うような女だから、別にいいんだよ」
そう答えた友季の表情は、これ以上ない程に不機嫌そうだった。
最初のコメントを投稿しよう!