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「トモ、くん……?」
舞が目をぱちくりさせると、
「うん。俺以外の誰かに見えた?」
友季は相変わらずの優しい笑顔で答えた。
「シェフにしか見えないです」
反射的に“トモくん”と呼んでしまったことに今更ながらに気が付いた舞が、慌てて言い直した。
「他の皆はもう帰ったから、いつも通りでいいぞ」
友季はそう言うと、
「おいで」
舞に向かって両手を広げる。
舞はそれに戸惑いながらも、素直に友季の胸に飛び込んだ。
「いい子だ。ほら、ご褒美」
友季が、何かを舞の唇に押し付けてくる。
素直な舞は、それを一口だけ恐る恐るかじり――
「……!」
元々大きな瞳を、更に大きく見開いた。
それは、舞がこの14年間ずっと探し求めていた懐かしい味で、
「お、いしい……」
自然と両目から涙が溢れてくる程に、美味しかった。
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