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サックリとした甘いクッキー生地の中に、不揃いのチョコチップがゴロゴロと入っていて、噛むほどに口の中で溶けてまろやかな甘さを残して消えていく。
甘いだけでなく程よいビターさを併せ持つチョコチップが、味覚としても食感としてもアクセントの役割を果たしている。
食べた時の食感も、サクッ、ゴロゴロ、トローリと3段階に分けて楽しめる。
紛れもない“バンソーコーのお兄ちゃんのチョコチップクッキー”そのものだった。
「その味?」
友季が舞の涙を指先でそっと拾う。
「うん、この味」
未だにぽろぽろと涙を零す舞に、
「俺にも味見させて」
友季はにっこりと優しく笑いかけると、舞の頬にそっと手を添えた。
――友季がキスをする前に必ずしてしまう癖。
友季のしようとしていることと“味見”の意味に気が付いた舞は、
「……」
何も言わずに静かに目を閉じる。
その時にまた舞の目から零れた雫が友季の手を濡らしたが、
「舞……」
友季は気にせず、舞の唇を優しく奪う。
すぐに舞の唇の隙間から舌を滑り込ませて、
「……う、んっ……」
友季のチョコチップクッキーの味がする舞をじっくりと味わう。
ここで初めてしてしまった時のように、舞の体を強く抱き締めて、夢中で貪り尽くす。
「あっ……ふ………」
舞が苦しそうに何かを訴えようとしているが、敢えて気付かないフリをした。
どうしても、まだ離してやれなかった。
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