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どのくらいの間、そうしていたのか分からない。
舞の体からはもう力が抜け切っていて、友季が抱き締めていなかったら今頃は倒れてしまっているだろう。
相当にしつこいと思われているかもしれないが、それでも全然足りない気がした。
本当はまだ離したくはないが、そろそろ舞が限界そうなので友季は名残惜しそうにゆっくりと唇を離す。
その瞬間、
「あっ……はぁ……」
しばらくぶりに出来た呼吸に、舞が安堵の溜息をついた。
友季の腕の中で、乱れた呼吸を一生懸命に整えようとしている様子が可愛くて、
「……連れて帰りたい」
舞を抱く腕に力を込める。
「私も……トモくんと離れたくない」
舞が友季の背中に腕を回して応えた。
「このクッキー、もっと食べたい」
ぽつりと聞こえた舞の声に、
「……」
甘いムードに持っていけたと思っていた友季は、眉間に皺を寄せる。
そんな友季を、舞はキラキラとした目で見上げ、
「トモくん家、まだクッキーいっぱいある?」
期待たっぷりの声で訊ねた。
「……あるけど」
友季の答えを聞いた舞の目が、ますますキラキラと輝いた。
「トモくんのお家行ってもいい?」
普段の友季なら、喜んで受け入れたであろう舞のこの台詞。
けれど、今はどうしても素直に頷きたくないと思ってしまった。
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