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店の開店時間は午前10時であるが、厨房メンバーは午前7時に出勤してきてケーキの仕込みや飾り付けを行う。
開店時間までに間に合わせる必要があるので、ゆっくり教えている時間がないと言われ、初出勤時間は大方の準備が終わる頃の9時となった。
約束の時間の15分前。
舞はドキドキしながら、前もって言われていた店の裏口から、そっと顔を覗かせる。
厨房には5人の男女がいて、皆忙しそうにバタバタと動き回っていた。
1人だけ、偉そうに指示を飛ばしまくっている男性がいた。
5人の中で一番若そうに見える彼が、
(あの人が、オーナーシェフ……?)
テレビや雑誌で何度も見たことのある、松野 友季だ。
実は舞は、面接の時も実技試験の時も、このオーナーシェフには一度も会っていなかった。
商品開発や原材料の仕入れ先の視察、テレビ雑誌の取材にと多忙な彼は、人事には一切関与していないと面接の時に聞かされた。
そんな有名人と化した多忙な彼を生で見たのは、今日が初めてだった。
が、舞は、この友季の顔を見ても正直に言って何とも思わなかった。
舞の興味はお菓子にしか向かない。
素晴らしいお菓子を生み出した彼を神のように尊敬してはいるが、イケメンだからどうとかいう色眼鏡で見たことなど、一度もなかった。
それは実物を見ても同じことだった。
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