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「シェフ、その言い方は……」
上田が、友季をそっと窘めようとしたが、
「どうせお前も、俺目当てでウチに入社したんだろ」
友季は目線と顎の先だけで舞をくいっと差した。
「……はい?」
舞は言われたことの意味が分からずに首を傾げた。
その態度と表情に苛立ちが出てしまっていることに、本人は気が付いていない。
「俺と付き合いたくて来たんだろうけど、俺にそんな気は全くないから。そんな半端な気持ちだけで入社して、すぐに辞められでもしたら、すげー迷惑なんだよ」
憧れの店に来ただけだというのに、この言われ様。
何と理不尽。
何と自信過剰。
何たる屈辱。
唇を噛み締めて必死に堪えていた舞であったが、
「だから入れるなら男にしてくれって――」
「お前の顔なんかどーでもいいんだよ! 私が好きなのはお前のお菓子だ、自惚れんなバカヤロー!」
舞の心の中の叫び声が、思い切り口をついて飛び出していた。
「……」
その直後、静かになったのは友季だけではない。
厨房で作業をしていた他のスタッフも全員、自分の作業を止めてこちらを凝視していた。
「あ……」
皆の視線に気付き、舞は自らの犯した失態に気が付いた。
「……今のって、声に出てましたか?」
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