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プロローグ
暖かな春の陽気が気持ちいい午後のひととき。
先日小学校に入学したばかりの鈴原 舞は、まだ体に馴染んでいない赤いランドセルを揺らしながら、懸命に走っていた。
今日のおやつは何だろう? と考えると、走らずにはいられなかった。
そして、慣れないランドセルに重心を取られてバランスを崩し、
「あっ……!」
盛大に転んだ。
しかも、アスファルトで固められた硬い道の上でのヘッドスライディング。
膝も太ももも腕も見事に擦り、その痛みに、
「うわぁぁぁんっ!」
それはもう盛大に泣き叫んだ。
「大丈夫!?」
偶然近くを通りかかって一部始終を見ていた男子高校生が、慌てて駆け寄ってくる。
「あー、可哀想に……血が出てる」
舞の体を支えて起こした彼は、
「よいしょっ」
舞を背中におんぶすると、
「そこの公園で、傷口を洗おう」
公園の手洗い場まで舞を運んでくれた。
そして、痛みで泣き叫ぶ舞を宥めながら傷口を洗い流してハンカチで拭き取ると、
「バンソーコー貼ってあげるから。ほら、もう痛くない」
自らの通学鞄から取り出した絆創膏を、舞の手足の傷口にペタペタと貼り付けた。
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