求婚は唐突に

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「先日、お受け頂いたと思ったのですが?」 「先日?」  わけがわからずきょとんと首を捻ると、オズワルド様は私の髪を一房、高級な絹を触っているかのようにそっと右手に取っていかれました。  手触りを楽しむように、くるりと指に巻きつけます。 「はい。求婚をした際に家を通してくださいとおっしゃったではありませんか?」 「確かに言いましたが」 「段階を踏んでとも言いましたね」 「えっ、……ええ」  前回もなかなか引いてもらえなかったので、最終的に父に丸投げしたともいいます。  それに、家を通し婚約が成り立ってしまえば、そう簡単に覆すことはできません。ですので、何かの策略なのだろうと、──例えば、ディストラーさん関係でそうする必要があったとか、形だけを望んだのではないかと、誰でもよくて、たまたまそこにいた私だったのではと考えました。  つまり、そういえば引くと思っての言葉のつもりでした。  私の混乱をよそに、オズワルド様はぐいぐいきます。 「ですので、ヴィアのご両親には話を通し承諾をいただきましたよ」 「承諾?」 「ええ。ヴィアが了承するならかまわないと」 「そ、そんな!?」  これは予想外すぎます。
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