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モブの役目は終えました
「ディストラーさん、そこでこれを拾いましたよ」
「えっ?」
差し出したのは、先ほど拾った教科書。何やら揉めているようですが、これを渡したら終わりでしょう。
「落とされましたよね? どうぞお受け取りになってください」
「……はぁ」
「ディストラーさん?」
「…………あっ」
もう一度声をかけても反応がなく、なかなか受け取ろうとしない彼女にしびれを切らし、私、シルヴィア・ロードウェスターは無理やり押し付けるように手渡します。
ずぶ濡れになっていたので、しっかり魔法で元の状態に直しておきました。
ついでにこっそり保護魔法もかけておきましたから、これで汚れたり破れたりはないはずです。ここ最近の彼女の周囲は少々荒れておりますしね。特別サービスです。
「では、失礼いたします」
お礼の言葉もないようですが、別にいいです。
少なくとも、私の出番は終わりだと聞いているのでやることやって即退場です。余計な言葉はいらないと聞いております。
ストロベリー色の髪に可愛らしい顔をしたクラスメイト──アリス・ディストラー男爵令嬢は、受け取った教科書と私を見比べなぜか困っておりますが、無事任務完了と私は少し離れた己の席に着きました。
クラスが一瞬シーンとなりましたが、また、わぁーわぁーと彼女を取り巻き騒ぎだします。
「どういうことですのっ!!」
「でも……」
周囲がさらにヒートアップしています。まだ揉めているようですが、いつも彼女の周りは賑わってますので私には関係ないことです。
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