帰り道

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「そうだよ!いつもここで待ってたら尚哉がご飯くれるじゃないか!俺、それがいつも楽しみで……尚哉に会えるのがすっごく楽しみで! だけど、今日はずーっと待ってても尚哉来なくて、暗くなってお腹空いて……空を見たらお月様が大きくて……。 そうだ、俺、尚哉に会いたい!尚哉とお話ししたい!ってお願いしたんだ」 俺に説明しながら途中から自分の記憶を辿る様な話になり、男は自分の両手を見てその両手で顔や体をペタペタ触る。 「尚哉!俺、何に見える?人間になってないか?!」 また意味不明な事を言い始める。 「腹が減ってるならこれやるから。急いでるんで、サヨナラ!!」 おかしな事言う奴とは関わるべきじゃない。早く離れるべきだと俺は犬にあげる予定だったコロッケパンを取り出すと男に渡し、走って逃げる。 「あ!尚哉!どこ行くの?!駆けっこするの?!」 男はキラーン!と目を輝かせ、一気に俺を追いかけ追い抜いて行った。 俺は足を止める。 大分先に行ってしまった男が慌てて帰ってくる。 「そう言えばボールも無いしゴールもどこなの?」 ……何なんだ!コイツ! 「ねー、尚哉〜。今日はずっと一緒に居て欲しいなぁ。俺、人間になれたのきっと月のお陰なんだ。月が無くなったらまた元の姿に戻っちまう…」 「元の姿って何だよ」 「犬のコテツに戻っちゃうよ」 コテツ……犬に付けた名前だ。これは俺と犬しか知らない事だ。 「お前……」 ジッと目の前の男を見ると、明るい茶色の瞳。コテツのツブラな瞳と重なる。 「俺、小さい頃にお腹空いて動けなくなってた時に尚哉に救ってもらって、ずぅっと恩返ししたかったんだけど、今も全然役に立てないし、変わらずご飯貰ってるんだけど、いつかいつか絶対恩返しするからね!!俺、尚哉の事大好きなんだ!!離れたく無いんだ!!この気持ちずっと言いたくって……」 人通りの少ない道だが、告白めいた言葉に少し周りを気にしてしまう。 「わ、分かった!とりあえず俺も腹減ったし、家に来るか?親は共働きで遅いから誰も居ないけど……」 言うと、コテツ(なのか?)はパッと顔を輝かせて
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