夜叉

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詳しくは話さないが、俺に欲情しちまって、大変だったんだ。 俺は頃合いを見てひらり、身を翻すと、身体を流して浴室の外へ出てやった。 そのあと中で飯島が何をしていたかなんて容易に想像がつく。 どんな男も俺の美貌にひれ伏す。滑稽な姿を晒す。 それが可笑しくて堪らなかった。 浴室を出て、服を着て外へ出ると、母がじっと立っていた。 今のやり取りはさすがに見えなかったろうが、大体の予測はついただろう。 内心怒りがおさまらないに違いなかったが、母は言った。 『健司さんとお風呂入ったのね。仲良くしてくれてよかったわ』 は、何が仲良くしてくれてよかったわ、だ。欠片もそんなことを思っていない癖に。 俺は可笑しくなって、 『母さんも飯島さんとお風呂、入ったら?』 なんて馬鹿にした口調で言ってやった。 そういうと、唇をかみしめて、何かに堪えるように、母親は黙り込んだ。 そんな小さな事件が続いて、ついにその日がやってきた。 飯島が俺の寝室に忍び込んできたのだ。 『春樹君、君も、私の気持ちはわかってるだろう』 そう言って、深夜、俺の体にのしかかる飯島。 身体を弄られて。
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