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紅蓮の華
夜も更け、橋の上に人通りが消えていた。
ファイアは短くなった煙草の火を消し、胸ポケットに仕舞い込んだ。
「ギュッタ、もし俺が『世界最強の兵器がドワーフの屁だ』て、言ったら信じられるかい?」
ギュッタは考えた。
ドワーフは、夜の妖精で体は空気でできているらしい。
明るいところが苦手。
岩石や鉱物の知識はとても豊富と聞いている。
おっとりとした性格で平和な存在。
「何か、証拠があれば。ドワーフって小さい頃に遠くから1、2回見ただけで…」
ファイア
「そうか、最近ドワーフを見かけない理由を知っているかい?」
ファイアが何か話そうとした、その時である。
橋の前で怪しげな男が立っている。
ファイア
「おい! 用がある時は俺1人の時にしろ!!」
怪しげな男
「お前1人では恐ろしくて近寄れん、足手纏いがいるところを、お邪魔した」
ファイア
「ギュッタ、行こう。」
逃げようとすると、別の怪しい男たちが現れ、囲まれてしまった。
ファイア
「分かった、話は聞こう。ここで騒ぎを起こしたくない、街の南に移動してもらおうか!」
怪しげな男
「物分かりがいいな。そいつも同道してもらうぞ」
前に1人、後ろに2人、ギュッタとファイアは逃げ場がない。
ギュッタは、悪夢だと思った。
プリエト4番橋を過ぎ、護岸が低くなり辺りは暗闇のスラム街だ。
ファイアは立ち止まり
「何が望みだ?」
怪しげな男
「我々はフロリバンダ王国騎士団の残党で俺が首領だ。お前は豚に化けているが『紅蓮の華』元フロリバンダ王国軍諜報部長グレン・カーン大佐だな!」
ファイアは返事をしなかった。
残党首領
「国王の許可なく兵役を離脱した罪と、ザイオンへの情報漏洩の罪でお前を処刑する!」
ファイア
「お前ら阿呆か〜? 兵役離脱ね、確かにグレン・カーンは去年の秋までは、フロリバンダ3ヶ月分の国家予算同等の賞金で国際手配はされていたが、以後の手配更新はなかったぜ〜!」
残党首領
「嘘をつくな! 前金は支払われているぞ!」
ファイア
「ほ~。そりゃ変だな、出資者のフロリバンダ王国は既に崩壊しているぜ~。俺が何時、何の情報をザイオンに漏らしたんだ?」
残党首領
「6年前、フロリバンダの秘密兵器をだ!」
ギュッタは、ファイア・レッドの目が赤く光っているのを見た。
ファイア
「ハッハッハ…!! 墓穴掘ったな、ザイオンの犬が! 6年前に、ザイオンが強制連行したドワーフを圧縮したガスで、石の壁をも焼き尽くす火炎魔導『地獄の火炎』を開発したことを、俺が『本国』に報告したんだよ! 誰も信じなかったがね。諜報部員なんて失脚すれば消される、だからトンズラしたまでさ〜!」
残党首領
「これ以上秘密をベラベラ喋ってもらう訳にはいかん! 死ね!!」
騎士団残党たちが2人に襲いかかろうとした瞬間、衝撃波が走った。
ギュッタはその場に伏せた。
顔を上げると、残党達も、顔を覆っている。
そして目の前にあの黒装束の男が、ギュッタを守るように立ちはだかっていた。
暗闇でも燃える様な赤い巻き毛に戦闘服で、覆面をしていない。
残党首領
「紅蓮の華! 遂に正体を現したな、ここでは大きな魔導も特技『紅蓮の華』も使えまい。覚悟しろ!!」
残党達は一斉に片刃の大刀を抜き、飛びかかってきた。
紅蓮の華こと、ファイア・レッドは素早い回し蹴りで、一斉攻撃を一蹴した。
ファイア
「ギュッタ、俺から絶対離れるな!」
ファイアは懐から反りの効いた短刀を逆手で抜き、一番体勢を崩している残党の首を跳ね飛ばした。
次の瞬間、残党の1人がギュッタを狙って斬りつけてきた。
ファイアは悲鳴を上げるギュッタを小脇に抱え、横飛びで斬撃を躱したが左腕を負傷した。
残党首領
「ほう。足手纏い効果は抜群だな」
ファイア
「卑怯者が!!」
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